今回は、研修展示館に展示された「世界の珍しい野生ラン」(つくば植物園の野生ランコレクションから)で見た品種から紹介します。
研修展示館1階の展示室入口です
「野生ランコレクション展示」と染め抜かれた幟旗は初めて見ました
まずは、植物園がおすすめの野生ラン 6種の紹介です
(各種の説明は植物園による)
デンドロピウム・トランキミアヌム
Den. trankimianum
ベトナム南部の標高1000~2000mの森で発見され、当園で研究し、
新種発表しました。世界でも殆ど栽培されていない希少品種です。
デンドロピウム・フレクスオスム
Den. flexuosm
インド北東部のカーシ丘陵で発見され、今から170牢あまり遡る1851年に
受表された種ですが.実体がよく理解されないまま今日に至りました。
当園がミャンマー西部での調査中に再発見した、貴重な保全個体です。
デンドロビウム・クサントフレビウム
Den. xanthophlebium
タイ~ミャンマーの標高1350mくらいの山地林の上で暮らす種。ほとんど栽培されることのない希少種。展示品は当園で種子繁殖した第2世代の個体。ひとつの花が2ヶ月以上も咲き続けますが、時間と共に色が変わるのも面白い特徴。
ジヤコウキヌラン
Zeuxine odorata
葉がつややかに輝く大型のジュエル・オーキッド。環境省により絶滅危惧IB類に指定される稀少種です。ジヤコウ(磨香)というように、ジュエル・オーキッドでは珍しく清々しい香りを纏います。種小名の odorata もラテン語で「香る」という意味です。横に長く伸びた茎に注目。節々から根を出して、地表を這い回ります。種子で子孫を残せなくても、株分かれして広がり定着することができるのです(ツユクサなどと似たサバイバル法)。自生地では数百にも及ぶ大群落になることがあるのも、この性質のお陰でしょう。琉球列島(沖縄島・石垣島・与那国島)と台湾南部の島、蘭嶼の森の暗い場所に生えます。
クレピディウム・メタリクム
Crepidium metallicum
マレー半島とボルネオ島の標高400~2000mくらいの森の中で暮らしています。数あるランの中で、最も妖しい色の葉をもつ種ではないでしょうか。色ばかりでなく鮮烈なきらめきも見事。種小名の metallicum も金属質の光沢にちなみます。1879年に新種として発表された論文でも「まさに宝石!」と記されています。何故こんな不思議な色の進化が起こったのか、大きな謎です。
リンコレリオカトレア・エンプレス オブ ロシア ‘オオヤマザキ’
Rlc. Empress of Russia ’Oyamazaki'
今回の特別出演。当園では品種改良した交配種の保存を行っていませんが、ある方から長年大切に育てたこの株を託されましした。‘オオヤマザキ(大山崎)’という栽培品種名は京都市の南の大山崎町にちなむもの。戦前、この地にあった加賀正太郎の大山崎山荘(現在の大山崎山荘美術館)は「ランのメッカ」と言われ、数々の新品種が生み出されました。展示品は大山崎山荘で育種され、銘花と謳われたものですが、今はほとんど残っていません。1925年6月21日に交配し、1933年5月に初めて咲いたと記録されています。
今回も、「ランの香り人気投票」が行われていました
1番 ジャコウキヌラン
上記で紹介したランです。名の通り、麝香の香りがしました
2番 デンドロビウム・ウィリアムソニイ
Den. williamsonii インド~ベトナム、中国に分布、3種の中では香りが弱い
3番 ナゴラン(名護蘭)
sedirea japonica 日本、中国南部、済州島に分布。 これも良い香り
人気登頂の途中経過
初日の13時半頃ですが、既に300人以上が投票(私は1番に投票)
その他の香りがするランの中から・・・
プレプタンテ・ルベンス
Preptanthe rubens インドシナ、ボルネオ島、フィリピンに分布
蝶が花粉を運ぶ種類
花の一部が変形してチューブ状になり蜜を貯える。蝶が口吻を伸ばして蜜を吸おうとするときに花粉が口吻に付着する
レリア・クローシェイアナ
Laelia x crawshayana 墨西哥南西部に分布 蜂が花粉を運ぶ種類
花弁の1枚(唇弁)の形や色が大きく変わり、蜜や花粉を出す花の中心に
蜂を導く。主な花色は紫、青、緑、黄で、甘い香りを漂わせる
次回も、つくば植物園の野生ランコレクションの中から紹介します。
(つづく)
この記事へのコメント
イッシー
下から2番目好きだな~。私は日曜日に立川のラン展行く予定です。
nobara
「ランの香り人気投票」
ナゴラン(名護蘭)の人気が高そうですね。
香りだけど花の姿も加味されてるのでしょうか?
プレプタンテ・ルベンス
なかなか可愛らしいお花ですね。
お花の大きさも可愛らしいですか?
もこ
river
「野生ランコレクション展示」ですね。群馬でも野生蘭専用で栽培している方がいます。原種だけが持つ魅力にあふれていますね。
長さん
ランはよい香りをもつものが多いですが、蝿が花粉を媒介するような品種は腐敗臭がするものもあります。
手話記念公園の蘭展の撮影は日曜日ですか、それは残念。
長さん
つくば植物園は野生ランの収集に力を入れているので、今回も多くの品種が展示されました。
香りの人気投票も毎年実施されています。ナゴランとジャコウキヌラン、人気を二分していました。香りの好みですが、中には花の好き嫌いを加味して投票する人がいるかもしれません。
プレプタンテ・ルベンス、小振りな花ですが、色も形も良いですね。
長さん
デンドロピウム・トランキミアヌムがお好みですか。近年発見された品種です。このような綺麗な花がまだ発見されずに、世界のどこかでひっそり咲いている可能性は高いです。
長さん
藤岡でも洋らん展が始まりましたか。2月、3月はらん展のシーズンですからね。
交配種では限らず、原種でも十分美しいものがありますし、野生ランの魅力に嵌まっている人も多いでしょうね、..
なおさん
イブキジャコウソウやらジャコウソウも麝香の香りということですが、ランにも麝香の香りがするのがあるとは、オドロイタ(オドレータ)ということですねえ。
ナゴランやフウランの香りも良いですよね。ニオイエビネの香りもずいぶん強いですが、ちょっとジンチョウゲの香りに通じるものがありますね。
長さん
国内の植物館の中では、原種ランの収集ではダントツでしょう。この時期に花が咲いている品種の中から展示していますから、実際にはこんな数ではありません。
ジャコウの香りのするランは初めての体験です。ラテン語のodorata が「香る」という意味というのは、面白いですよね。
eko
プレプタンテ・ルベンスの花色が素敵です。
yoppy702
それだけ、作家さんの技術、センスが素晴らしいんでしょうね。
コメ返でも頂いてた「ジュエル・オーキッド」に興味が湧きました。
ジヤコウキヌランの香りは人気が高いんですね。
「葉がつややかに輝く大型のジュエル・オーキッド」、見てみたいですね。(^^ゞ
咲くやこの花館には、コブラ・オーキッドというのがありましたけど…
あっ、単に、オーキッドつながりだけです。(^^ゞ
クレピディウム・メタリクム、スゴイ質感と色ですね。
「まさに宝石!」という言葉に、メッチャ引かれます。
つくば植物園って、研究&発表など多くの功績があるんですね。
さすが、「筑波実験植物園」ですね。
すーちん
野生蘭も
魅力ありますねー
高尾山、以前登ったとき
木の天辺に蘭が生息してましたー
原種でしょうね
長さん
原種ランの中にはよい香りをもつものも多いです。ジャコウキヌらんは長い茎の先に小さな花がいくつも咲きます。小さい花なのに、香りは、それより数倍も大きなナゴランに引けを取りません。
プレプタンテ・ルベンス、会場が明るくないので、本来の色が出ていません。
長さん
私だって、名札にラテン語の名前がなければ野生ランか、園芸種かは判断できません。
ジュエルオーキッド、後日投稿予定ですが、写真の写りが良くないので困っています。
ジャコウキヌラン、小さな花なのに、香りは大きな花に引けを取りません。
クレピディウム・メタリクム、花はあまり見る価値がありませんが、葉の色にはビックリしますね。
この植物園、野生ランに関しては世界的レベルです。
長さん
高尾山のランで、木に着生していると言ったら、原種のセッコクでしょう。