今回も、多目的温室に展示されていた、琉球や小笠原の絶滅危惧植物の紹介を続けます。最期の2種類は花ではありませんが、初見の木本です。
トカラアジサイ(吐噶喇紫陽花)
アジサイ科アジサイ属の常緑低木。絶滅危惧IB類(EN)
吐噶喇列島、奄美諸島(徳之島・沖永良部島)、中国、フィリピンに分布
沖縄県では絶滅寸前。ガクウツギ、コガクウツギ等も近縁といわれる
別名:カラコンテリギ、トカラコンテリギ、トカラウツギなど
ヒメタツナミソウ(姫立浪草)
シソ科タツナミソウ属の多年草。鹿児島県喜界島固有種
日当たりが良く、やや湿った環境に生育。草丈は5cm程度
喜界町天然記念物。環境省の絶滅危惧IB類(EN)。 まだ蕾だった
マルバハタケムシロ(丸葉畑蓆)
キキョウ科ミゾカクシ属の常緑多年草。琉球列島の固有種。海岸の湿った
岩場に生育。沖縄島では絶滅。最近、久米島で再確認。近縁種はオースト
ラリアに分布する。花径は1cmに満たない。環境省の絶滅危惧IB類 (EN)
ヤナギニガナ(柳苦菜)
キク科ニガナ属の多年草。絶滅危惧II類 (VU)
九州南部~琉球列島~マレーシアに分布。日本は北限でもともと少ない
葉は少々厚手で、波針形。別名:アツバニガナ(厚葉苦菜)
花径は1.5cm。ハナニガナにそっくりだが、葉の形が全く違う
ケラマツツジ(慶良間躑躅)
ツツジ科ツツジ属の常緑低木、奄美大島以南~沖縄群島。名は慶良間
諸島にちなむ。かつては普通に見られたが、近年は園芸目的で乱獲さ
れ、個体数が少なくなっている。絶滅危惧II類(VU)
ムニンツツジ(無人躑躅)
ツツジ科ツツジ属の常緑低木。小笠原諸島父島のみに自生する日本固有種
絶滅危惧IA類(CR)。自生株は1株のみ。別名:オガサワラツツジ(小笠原躑躅)
花弁が1枚脱落しているようだ
ギーマ(ぎーま)
ツツジ科スノキ属の常緑低木。琉球(奄美大島以南)と台湾に分布
乾燥した明るい場所に生育。酸性土壌に生育する集団もあり、種内で
環境適応分化している可能性がある。「ぎーま」は沖縄の方言
昨年出来た実が残っていた
アマミアセビ(奄美馬酔木)
ツツジ科アセビ属の常緑低木。奄美黄島の固有種
以前は沖縄本島にも分布するリュウキュウアセビとされていたが、
近年、花の形態が異なるため、新種として区別された
リュウキュウアセビは絶滅危惧IA類(CR)だが、これは未指定
アセビの中では花冠が大きく、葉が肉厚なのが特徴
アカボシタツナミソウ(赤星立浪草)
シソ科タツナミソウ属の多年草。琉球列島の固有種。林縁や草地に生える
これは白地に紫の斑点だが、薄紫地に濃い紫の斑点のものもあるという
ヒメキランソウ(姫金瘡小草)
シソ科キランソウ属の多年草。日本(九州~琉球列島)、台湾に分布
佐賀が北限。九州産と琉球列島産に花の形態などに異変があり、分類
研究が必要(福岡、佐賀、熊本で絶滅危惧種に指定)
姫とつくが、キランソウに比べ花は大きく、群生することが多い
シマムロ(島榁) 初見です
ヒノキ科ネズミサシ属の常緑小高木。小笠原諸島固有種(唯一の針葉樹)
地面を這い、環境によっては10mの長さを超える。樹脂を多く含み、
焚き付けに適していることから頻繁に伐採され、激減した。雌雄異株
現在は枯れ木の採取も禁止されている。絶滅危惧II類(VU)
ハナコミカンボク(花小蜜柑木) 初見です
コミカンソウ科コミカンソウ属の落葉小低木。絶滅危惧IB類(EN)
自生地は「万座毛石灰岩植物群落」として沖縄県指定天然記念物に指定
開花時期は周年で、葉の葉腋からごく小さな紅紫色の6弁の花が下垂する
次回は、絶滅危惧植物温室に入ります。
(つづく)
この記事へのコメント
なおさん
絶滅が危惧される希少な植物の増殖・保護も重要なことですね。
長さん
国内の絶滅危惧種の収集・保全はこの植物園の使命のひとつです。園内で増やすことに成功すると、他の植物園に配布したり、現地に戻すような活動も行っているそうです。
もこ
ドクダミの開花等々をはじめとして
絶滅危惧種や希少価値の植物色々見せて頂きました。
絶滅危惧種の増殖をして各地の植物園で増やす取り組みはなかなか大変ですね。
nobara
楚々としていますね。
マルバハタケムシロ、丸葉ですね(*^-゚)⌒☆
ケラマツツジってヤマツツジの色合いですね。
アマミアセビ、お花が可愛いですね☆彡
ヒメキランソウは宮古島で大群生を見ました。
見事!でしたよ。
イッシー
持続可能を考えに入れてほしいですよね~。
bunko
無名子
自然の摂理の中での盛衰は仕方無いとしても、
人為的な物は困りますよね。
絶滅危惧種、少しでも保護育成して欲しいです。
長さん
絶滅危惧種を環境が異なる場所で増やすのは大変だと思いますが、これからも継続して力を入れてもらいたいと思います。
river
長さん
トカラアジサイは、ガクウツギやコガクウツギと近縁といわれるだけあって、花姿はよく似ていますね。
マルバハタケムシロは、ハタケムシロと同属なのに、花も葉も似ていませんね。
ケラマツツジやアマミアセビ、名札がなければ他のツツジや馬酔木との区別は難しそう。
ヒメキランソウの群落をご覧になりましたか。沖縄県では絶滅は危惧されていませんから、繁殖しているんですね。
長さん
シマムシロのことですね。昔、カツオ漁が盛んだった頃、燻蒸用材として乱伐されたために、激減したのだそうです。現在は採取禁止ですから、増えると良いですね。
長さん
こうして絶滅が危惧される食部を見る事が出来るのは、この植物園が国立科学博物館の付属属機関としての役割を果たしているからこそです。
説明文は名札やネットから引用したものです。
長さん
絶滅危惧種を、それぞれの生存環境とは異なる植物園での保存や育成は大変だと思いますが、何とか増やして、現地に戻してほしいものです。
長さん
ガクウツギの仲間を色々集めて育てたこと田尾ありですか。自家製の温室があれば別ですが、やはり、自生地との温度差が壁だったのですね。その点、コガクウツギは耐寒性があるようですね。
eko
アマミアセビは白くてとても綺麗な可愛い花が咲きますね。
ミキ
何だか嬉しくなりました。
絶滅危惧種と聞くと切ない思いをしますが、
植物園で保護されていると思うと、ほっとします。
この頃のように、気温の変化が大きいと、
着いててゆけない植物も出てくるのでは、
と心配になりますね。(^^♪
yoppy702
さすが、つくば植物園やと唸ってしまいました。
パッと見は似ていても、その違いを見つけるってスゴイ事ですね。
アマミアセビ と リュウキュウアセビは、近年、異種とされるなんて、研究は続いてるって事ですもんね。
アマミ と リュウキュウやったら、同じ種と思ってしまいます。(^^ゞ
シマムロという木、小笠原諸島唯一の針葉樹ですか。
樹脂を多く含み、焚き付けに適している事で頻繁に伐採され、激減…
動物を含め、絶滅危惧って、人間が関係してる事も多いんですね。
すーちん
ヤナギニガナですか
よく見掛けると思いましたが
ハナニガナトは又違った
葉の形なんですね
行き当たりばったり
絶滅が危惧されてる種類、思いのほか多いですね。
トカラ--、ケラマ--、ギーマ、あまみ--など、地域の地名、言葉が入ってる名前も多いようです。
保存育成も大切な仕事なんですね----。
長さん
琉球レットや小笠原などの離島では、それぞれ独自な進化を飛べることが多く、本土とは違った種が出来ることがあります。もともと、数が少ないこともあり、乱獲や宅地化などで絶滅危惧植物となったものも多いようです。小学校の頃から、絶滅危惧種の教育をすることも必要でしょうね。
長さん
立つなっ見そう、お好きですか。この植物園でも増やす努力をしているので、自生地に戻す取り組みまで発展すると良いですね。
気候変動を人間がコントロールするのは大変ですが、こうした植物も対応する能力あると良いですね。
長さん
絶滅危惧種に限らず、地域変種についても、具体的にどこがどう違うのか、目視で。あるいは遺伝子分析など科学の力も使って調査・研究が続けられています。
小笠原諸島では、昔、カツオ漁が盛んだった頃、シマムシロを燻蒸用材として乱伐したために、激減したのだそうです。現在は枯れ木といえども採取禁止ですから、増えると良いですね
長さん
ヤナギニガナとハナニガナ、花の形は全く同じですが、ハナニガナ(ニガナの変種)は葉が幅広で付け根は茎を抱きます。一方のヤナギニガナは葉の幅が細く、葉柄があります。
長さん
絶滅危惧植物、日本にも数多くあります。
離島の植物は自生地の名前を冠するものが多いですね。
絶滅危惧植物の収集・保全は国主導の取り組みが必要です。この植物園は国立科学博物館の付属組織ですから、植物園の使命の一つになっています。