市川市「万葉植物園」にて(5) オミナエシ、オトコエシ、ミソハギ、シュウメイギク、ニラ、ジュズダマ、ウツギ、サワヒヨドリ、ハコネシダ、ネズミサシ、クサボケ、クロモジ

 9月10日に行った、市川市「万葉植物園」で見た花などを記録しています。
 今回はその最終回です。


園内の風景その5
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オミナエシ(女郎花)
オミナエシ科オミナエシ属 の多年草。日本では沖縄を除く全土に分布
花期は6~11月。別名:チメグサ(血目草)、思い草、敗醤(はいしょう)
万葉名は女郎花(をみなえし)。万葉集には14首が登場する
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 手に取れば 袖さへにほふ をみなへし この白露に 散らまく惜しも
 作者不詳 巻10-2115


オトコエシ(男郎花)
オミナエシ科オミナエシ属の多年草。花期は8-10月
日本では北海道から九州までと、琉球列島で奄美大島に分布
万葉集には登場しない
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ミソハギ(禊萩)
ミソハギ科ミソハギ属の多年草。日本~朝鮮半島に分布
別名:ボンバナ(盆花)、ショウリョウバナ(精霊花)など
古くから知られている草だが、万葉集には登場しない
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シュウメイギク(秋明菊)
キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。原産は中国、台湾
別名:キブネギク(貴船菊)。これも、万葉集には登場しない
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ニラ(韮、韭)
ヒガンバナ科ネギ属の多年草。原産はインド~中国。日本は?がつく
古事記では加美良(かみら)、万葉名は久々美良(くくみら)、
正倉院文書には彌良(みら)として記載がある
たまたま、アゲハチョウが吸蜜に来た
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 伎波都久(きはつく)の 岡の茎韮(くくみら)我れ摘めど 籠(こ)に満(み)たなふ
    背なと摘まさね  東歌 作者未詳 巻14-3444


ジュズダマ(数珠玉)
イネ科ジュズダマ属の多年草。熱帯アジア原産。万葉集にはない
既に、「玉」(苞葉鞘)が白や黒になり始めていた
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ウツギ(空木)の実
アジサイ科ウツギ属の落葉低木。北海道南部、本州、四国、九州に広く分布
別名:ウノハナ。万葉名は卯(う)。万葉集には24首あり、その多くが、
霍公鳥(ほととぎす)とセットで詠まれている
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 卯の花の 過ぎば惜(を)しみか 霍公鳥 雨間(あまま)も置かず
     こゆ鳴き渡る   大伴家持  巻8-149


サワヒヨドリ(沢鵯)
キク科ヒヨドリバナ属の多年草。山地の日当りのよい湿地に生える
花期は8~9月だが、既に花は終わっていた
万葉名は沢蘭(さはあららぎ)
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 天皇太后 共に大納言藤原の家に幸(いでま)す日に 黄葉(もみぢ)せる沢蘭
  一株を抜き取りて・・・  作者不詳 巻19-4268


ハコネシダ(箱根羊歯)
ホウライシダ科ホウライシダ属のシダ植物。日本では本州・四国・九州に分布
万葉名は似児草。日草(にこぐさ、諸説あり)
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  あしがりの 箱根の嶺(ね)ろのにこ草の 花つ妻なれや 紐(ひも)解かず寝む   
  作者不詳 巻14-3370


ネズミサシ(鼠刺)
ヒノキ科ビャクシン属の針葉樹。在来種。別名:ネズ(杜松)など
盆栽では杜松(としょう)。万葉名は室乃樹・天木香むろのき
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 我妹子(わぎもこ)が 見し鞆の浦の むろの木は 常世にあれど
     見し人ぞなき   大伴家持 巻3-446


クサボケ(草木瓜)の実
バラ科ボケ属の落葉小低木。日本固有種。花期は3~6月。結実期は8~9月
万葉集にあるアセビ(馬酔木)はクサボケではないか、との説がある
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クロモジ(黒文字)
クスノキ科クロモジ属の落葉低木。北海道南部~九州に分布
先端の黄色い部分は、来年伸びる新芽でしょうか?
万葉集には詠まれていません
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こんな花が咲きます(2017年5月8日撮影)
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 2022年9月10日撮影。

(シリーズ終了)

この記事へのコメント

  • river

    サワヒヨドリの歌は次の通りです。
    此里者 継而霜哉置 夏野尓 吾見之草波 毛美知多里家利
    この里は 継て霜や置く 夏の野に 我が見し草は もみちたりれり 4269
    万葉植物園の紹介ありがとうございました。久しぶりに万葉集を読み返しました。
    2022年09月17日 13:44
  • 長さん

    riverさん、コメントありがとうございます。
    サワヒヨドリの万葉歌、ご紹介いただきありがとうございます。孝謙天皇の短歌だそうですね。
    記事に書いた歌は植物園の立て札に書かれていたものですが、万葉集のその次の歌4269もサワヒヨドリが関係していたのですね。
    2022年09月17日 14:56
  • なおさん

    男郎花が男飯で白米、女郎花が女飯で粟飯などというと、今では男尊女卑だと大炎上してしまいますよねえ。オミナエシとオトコエシの交雑種もあるそうですが、オカマエシという名ではなく、オトコオミナエシというあるきたる
    2022年09月17日 17:11
  • イッシー

    植物がどの年代に入ってきたのかなど、あまり気にしてみていませんでしたが、万葉集という歴史的背景から見直してみると面白いんですね。そういえば若いころ万葉集の本持ってたっけ。笑
    最後の写真綺麗ですね!
    2022年09月17日 17:11
  • なおさん

    ついうっかり送信してしまいましたので、オソレいります。

     ニラやニンニクは匂いが強いのでお寺では禁物とされたところもあるようですが、強壮効果もあるので修業には効果もありそうですよねえ。
    2022年09月17日 17:17
  • eko

    オミナエシ、オトコエシ、ミソハギ、ジュズダマなど偶然に一緒の日にアップですね。同じような花が咲いているということですね。白いシュウメイギクが綺麗です。万葉集には登場しないんですね
    万葉集特集の草花、色々ありますね。こういう視点から見るのも面白いです。
    2022年09月17日 17:23
  • 無名子

    こんばんは!
    万葉集に拘わる花、その時代性もあるんでしょうが、
    この花が載っているのに、何故こっちは載らないの?
    と不思議に思う物もありますね。
    コレを機に万葉集を読み直そうかと思うけど、
    途中で放り出しそうです (^o^)
    2022年09月17日 19:02
  • 長さん

    なおさん、コメントありがとうございます。
    昔の人もオトコエシでは歌にならないと思ったのでしょうね。オミナエシとの交雑種がありますか。オトコオミナエシ、ややこしい名前ですね。
    2022年09月17日 19:03
  • 長さん

    イッシーさん、コメントありがとうございます。
    昔から日本にあった草花でも万葉集に詠まれていないものもありますから、これだけが基準にはなりませんけどね。
    最期の写真ですか。今回の写真ではなくて、残念(笑)。
    2022年09月17日 19:06
  • 長さん

    なおさん、コメントありがとうございます。
    ニラやニンニク、当時から薬草として知られていたのでしょうね。
    2022年09月17日 19:09
  • 長さん

    ekoさん、コメントありがとうございます。
    岐阜県と千葉県は緯度がそれほど違いませんから、季節の花は共通するものが多いようですね。
    白いシュウメイギク、今年は初めて出会えました。古い時代に中国から伝わったのに、万葉集に詠まれていないのは意外でした。
    2022年09月17日 19:15
  • 長さん

    無名子さん、コメントありがとうございます。
    奈良時代も様々な花が咲いていたと思いますが、万葉人の趣味に合わなかったり、生活圏に咲いていなかったりで、詠まれなかったものもあるのですね。
    万葉集には4,500首も載っているそうですから、私なんぞはその数だけ見ても尻込みです。
    2022年09月17日 19:18
  • 信徳

    今晩は!
    オミナエシ、オトコエシ、サワヒヨドリ、どれも群生してチョウが好みそうです。都会でもアサギマダラは見られないのでしょうか?
    2022年09月17日 19:57
  • nobara

    TOPの池の畔(右に)オトコエシが咲いてるなと眺めてたら
    オミナエシに続いて、いっぱい咲いてるのがアップされてました。
    すごぉ~いですね。
    これの交雑をオカマエシ?思わず、笑ってしまいました。
    オトコオミナエシというそうな?へ~~~です。
    ハコネシダ、なんか惹かれましたぁ~~~
    こんな感じが大好きです。
    市川の万葉植物園でシリーズ5まで行ったのですね@@
    2022年09月17日 20:45
  • 長さん

    信徳さん、コメントありがとうございます。
    オミナエシが万葉集に載っていて、オトコエシが載っていないなんて、片手落ちじゃないですかねー(笑)。これだけ群生していても、周りで咲いていないから、アサギマダラには見つからないでしょうね。
    2022年09月17日 21:08
  • 長さん

    nobaraさん、コメントありがとうございます。
    1枚目にオトコエシが写っているのに気付かれましたか、流石。オカマエシには笑ってしまいましたが、オトコオミナエシと言うのが正式和名だそうですが、「遺伝的には完全にオトコエシの変異であって、オミナエシとの雑種に由来するものではなく、オトコエシ種内における高次倍数体間の交雑によってできた」とする論文も発表されているそうです。
    ハコネシダ、葉が小さく、可愛らしいですよ。
    今回は、花だけでなく、木本も含めたので、5回になりました。
    2022年09月17日 21:15
  • yoppy702

    園内の風景その5、イイ池がありますね。
    前記事の綺麗に剪定された松を見ても、ここは、良く手入れされてるなぁ…と感じました。
    入口の画像を見た時は???となったんですが、ここ素晴らしいですね。
    良い所を開拓されましたね。(^^)

    こういう所にオミナエシがあると高級感がありますね。(^^ゞ
    オッ、オトコエシもあるんや。
    ニラの花、綺麗に咲いてますね。
    そりゃー、アゲハも夢中になりますね。(^^)
    クロモジの花って、初めて見ました。
    こんな可愛いい花が咲くんですねぇ。
    5月8日撮影ですか…
    来年の、これ位の時季に覚えていたら、探しに行ってみます。(^^)
    2022年09月18日 00:19
  • すーちん

    おはようございます
    ネズミサシとは物騒な
    名ですね
    触ると痛いですが
    2022年09月18日 07:09
  • 長さん

    yoppy702さん、コメントありがとうございます。
    入口を見たら、ちょっと期待外れかと思ったのですが、四季折々に訪ねてみる価値はありそうです。
    さほど広い公園ではありませんが、この日はお二人の作業員が植栽の手入れをされていました。
    オミナエシとオトコエシが近くに植えられていました。
    クロモジの花は箱根湿性花園で撮ったものです。早春の花なので、普通は3~4月頃です。
    2022年09月18日 10:45
  • 長さん

    すーちんさん、コメントありがとうございます。
    ネズミサシは葉の先端が尖っているので、鼠が嫌がると言うことで、昔は鼠除けに使われていたのだそうです。
    2022年09月18日 10:48

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