市川市「万葉植物園」にて(4) アサザ、ジュンサイ、マクワウリ、カラタチ、イヌビワ、コムラサキ、ヒオウギ、ワレモコウ、ロウバイ、カジノキ

 9月10日に行った、市川市「万葉植物園」で見た花などを記録しています。
 園内の最奥部に5坪ほどの金網囲いのスペースがあり、水草や野菜などが植えられていました。


アサザ(浅沙、阿佐佐)
ミツガシワ科アサザ属の多年草。日本では、本州~九州の池や沼に生える
花期は5~9月。 花径3~4cm。万葉名は阿邪左(あさざ)で、一首のみ
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 うち日さつ 三宅の原ゆ か黒き髪に 眞木綿(まゆふ)持ち
      あさざ結ひ垂れ・・・(長歌) 作者不詳 巻13-3295


ジュンサイ(蓴菜)
ハゴロモモ科 (ジュンサイ科、スイレン科)ジュンサイ属の多年草
アサザと同じ水槽に瓶を沈めて育てられていた。花期は6~8月
秋田県三種町はじゅんさいの生産量が日本一。万葉名は蓴(ぬはな)
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 わが情(こころ) ゆたにたゆたに 浮蓴(ぬはな) 邊(へ)にも沖にも
    寄りかつましじ   作者不詳 巻7-1352


マクワウリ(真桑瓜)
ウリ科キュウリ属のつる性一年草。東南アジア原産のメロンの変種
古くから食用にされ、古くは「うり」と言えばマクワウリを指すものだった
万葉名は瓜(うり)
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 瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ・・・
 長歌 山上憶良 巻5-802


園内の風景その4
松が綺麗に剪定され、芝生も綺麗
万葉集には、松は、萩や梅に次いで、多く登場する
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 み吉野の玉 松が枝は はしきかも 君が御言を 持ちて通はく
 額田王が弓削皇子の歌に答えて読んだもの 巻2-113


カラタチ(枳殻、枸橘)
ミカン科カラタチ属の落葉低木。原産は長江上流域。日本には8世紀頃伝来
からたちは唐(中国)産の橘から。万葉名は枳(からたち)
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 からたちの 茨(うばら)刈り除(そ)け 倉(くら)建てむ 屎(くそ)遠くまれ
  櫛(くし)造る刀自(とじ)   忌部首(おびと) 巻16-3832
 宴席で戯れに詠んだ歌とのことで、万葉集にしては品が良くない歌だ


イヌビワ(犬枇杷)の実
クワ科イチジク属の落葉小高木。関東以西の本州~沖縄に自生
雌雄異株。花期は4〜5月頃。実の径は10~13mm位
別名:イタビ、イタブ、チチノキ。万葉名は知智(ちち)
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 知智の実の父の命(みこと) 柞葉(ははそは)の母の命(みこと)・・・
   語り継ぐべく 名をたつべしも・・・ (長歌) 大伴家持 巻19-4164


コムラサキ(小紫)の実
シソ科(←クマツヅラ科)ムラサキシキブ属の落葉低木。本州〜沖縄に分布
万葉集には、ムラサキシキブも含めて、登場しない。意外だった
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ヒオウギ(檜扇)
アヤメ科アヤメ属の多年草。本州・四国・九州に分布
黒い種は「ぬばたま」と呼ばれていますが、万葉名もぬばたまです
万葉集には、植物名としては出てきませんが、枕詞で多用されています
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 居明(ゐあ)かして 君をば待たむ ぬばたまの 我が黒髪に 霜は降ると
  磐姫皇后(いわのひめのおおきさき) 巻2-89


ワレモコウ(吾亦紅)
バラ科ワレモコウ属の多年草。日本では、北海道から九州に分布
奈良時代には既に「われもこう」と呼ばれていたが、万葉集には登場しない
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ロウバイ(蝋梅)の実
ロウバイ科ロウバイ属の落葉低木。原産は中国南部
日本への渡来は17世紀(江戸時代)なので、万葉時代には存在しない
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カジノキ(梶の木)
クワ科コウゾ属の落葉高木。日本国内では中部地方南部以西~沖縄に分布
別名:カジ(梶)、コウ(構)。万葉名は栲(たく、たへ)など
栲はカジノキまたはコウゾの古名で、当時はその区別がなかったそうだ
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 沖つ波 来寄る荒礒を 敷栲の枕とまきて 寝せる君かも
 柿本人麻呂 巻2-222
 (コウゾの皮から取った長い繊維のことも「栲」と言っていた)

 2022年9月10日撮影。

(つづく)

この記事へのコメント

  • river

    瓜食めば・・いづくより 来たりしものそ まなかひに もとなかかりて 安眠(やすい)しなさぬ 「子等を思ふ歌」としてあまりにも有名ですね。
    反歌は
    銀母 金母玉母 奈尓世武尓 麻佐礼留 多可良 古尓斯迦米夜母
    銀(しろかね)も 金(くがね)も玉も なにせむに 優れる宝 子に及(し)かめやも
    万葉集には出てこない植物もありますね。
    2022年09月16日 14:55
  • 長さん

    riverさん、コメントありがとうございます。
    万葉集は全く勉強しなかったので、にわか仕込みです。反歌や返歌、答歌は同じような意味だと思っていましたから。
    2022年09月16日 15:36
  • nobara

    アサザ、白樺湖に群生していました。
    出かける頃は蕾んでましたが山からおりてきたら
    ぱっかり開いていました
    スワンボートや鴨さん鯉さんがいっぱいなのに増えています。
    ジュンサイはぬらッとしておいしいですよね。
    今季はまくわ瓜をたくさんいただきました。
    売主さんはまくわ瓜じゃなくて、新メロンですと言い張って(^o^)丿
    サクサクと美味しく頂きました。甘すぎないのがいいですね。
    カラタチ、筋がはいってますね~
    黄色くなる頃ピンポンみたいにして遊びました。
    イヌビワ、ふむふむ~案外と美味しいです。
    枇杷?というよりイチジクに似てると思うのですが。
    カジノキの葉っぱ。面白い形ですね。
    実は美味しいですよ!
    2022年09月16日 17:20
  • eko

    アサザがたくさん咲いていますね。この花も万葉の時代からあるんですね。
    マクワウリ好きです。父が退職後、畑でよく作って持って来てくれました。あっさりとして美味しいです。古くからあるんですね。
    コムラサキやワレモコウが登場しないのは意外でした。
    ヒオウギは可愛いですね。ぬばたまと呼ばれる種も綺麗です。枕詞として知られていますね。
    2022年09月16日 17:33
  • イッシー

    イヌビワの写真が好きです!
    カラタチって聞いたことはあるけれど、
    見たのは初めてかもしれません。
    2022年09月16日 17:47
  • なおさん

    アサザはキュウリを小型にしたような花ですよねえ。神代植物公園の水生植物園で以前見た記憶があります。

     カラタチはトゲがものスゴイですから、生け垣などにすると防犯効果抜群でしょうねえ。

     カジノキは七夕の際に葉に溜まった露で墨を摺り、手習いすると字が上手くなるとか言われましたし、繊維で布も織られたものですね。武蔵丘陵森林公園でも見られます。オレンジの実は食べてもなかなか美味しいですね。
    2022年09月16日 18:48
  • 無名子

    こんばんは!
    アサザは一度だけ見たことがあります。
    スイレンの咲く中にチョコッと咲いていたのが可愛かった。
    マクワウリ、父の実家でスイカ、メロンと一緒に作られて居ました、ここのとは違ってスイカを細長くしたような品種。
    味は・・・ 記憶の彼方に (^o^)
    山上憶良の「子等を思う歌」読み直してみました、憶良がこの歌を詠んだ年齢に近いせいか、感慨深いです。
    2022年09月16日 19:28
  • 信徳

    今晩は!
    マクワウリは懐かしいですね。子供の頃はマクワウリだけ。
    黄色いのとグリーンの色が有ったように記憶しています。
    隣町の八色スイカなど滅多に食べられない時代でした。
    2022年09月16日 19:57
  • もこ

    万葉植物園にマクワウリにビックリ!
    島倉さんの「カラタチ?カラタチ?カラタチ?のは~な」って
    歌は知っていますが カラタチの花も実も見たことがありません
    注意してみるとこの近くにもあるのかしら・・・
    2022年09月16日 20:44
  • 長さん

    nobaraさん、コメントありがとうございます。
    アサザが白樺期に群生とは驚きました。大きな湖は波があるので育ちにくいそうなので、もしかして、その近くの小さな湖じゃないですか。
    ジュンサイは旅館の料理でしか食べた記憶がありません。
    新メロンですか。マクワウリは日本のメロンと言う人もいますからね。
    カラタチの実は重そうですが、ピンポン球の代わりになりましたか。
    イヌビワは食べたことがないですよ。
    カジノキの葉はクワ科と言われれば、その形に納得です。
    2022年09月16日 21:19
  • 長さん

    ekoさん、コメントありがとうございます。
    私の子供の頃はマクワウリが夏のおやつで出てきたので、懐かしいです。
    コムラサキはワレモコウ、ちょっと意外でしたよ。ぬばたまは枕詞で有名なので、私でも知っていました。
    2022年09月16日 21:21
  • 長さん

    イッシーさん、コメントありがとうございます。
    イヌビワの実、熟す過程で色が変わるのが分るので、この写真を選びました。
    カラタチは歌でも有名ですね。こんなに大きな棘でなくて良いのにと、いつも思います。
    2022年09月16日 21:27
  • 長さん

    なおさん、コメントありがとうございます。
    >アサザはキュウリを小型にしたような花
    言えてますね。
    カラタチは棘は、薔薇が裸足で似ていくような大きさですね。
    カジノキは小石川植物園で雄株を見たことがありますが、そんないわれがあるのですね。それは知りませんでした。図鑑によると、花も実も面白い形ですね。
    2022年09月16日 21:39
  • 長さん

    無名子さん、コメントありがとうございます。
    アサザは植物園などで何度か見たことがありますが、皇居東御苑の二の丸池にもあります。
    マクワウリ、子供の頃は何度も食べたことがあります。味は覚えていませんが、甘くはなかったような。栽培種によって実の形が違うのでしょうか。
    山上憶良は良い歌を沢山作ったようですね。
    2022年09月16日 21:46
  • 長さん

    信徳さん、コメントありがとうございます。
    我々の年代は、マクワウリが懐かしいですよね。実の色は黄色でしたが、よく食べた記憶があります。
    八色スイカ、実の色が8色もあるのかと思ったら、八色原という所で作られているスイカだそうですね。
    2022年09月16日 21:51
  • 長さん

     もこさん、コメントありがとうございます。
    マクワウリは古くから知られていたのですね。
    島倉千代子のカラタチ日記、懐かしい。美空ひばりも詠っていたような。カラタチは花も実も見たことが無かったのですが、ここで実を初めて見ました。
    2022年09月16日 21:57
  • すーちん

    おはようございます
    ロウバイの花が咲く頃
    まだ葉っぱが落ちてません
    咲いたの気が付かないことも^^
    2022年09月17日 07:23
  • 長さん

    すーちんさん、コメントありがとうございます。
    ロウバイは花の時期までに落葉するのが普通ですが、花が咲いてもまだ残っている木もありますね。
    2022年09月17日 09:52
  • ジュン

    カラタチ
    歌われていますよね
    実がなるのですね初めて見ました
    2022年09月17日 10:12
  • 長さん

    ジュンさん、コメントありがとうございます。
    島倉千代子や美空ひばりの歌に出てくるカラタチですが、今はあまり目にすることのない木ですね。私も、実を見たのは初めてです。
    2022年09月17日 14:48
  • コスモス

    カラタチは鋭い棘の印象が強いですね。
    花は見たことありますが、実は大きそうですね。
    近所で綺麗に色づいたコムラサキを見ました。
    気温が少し下がったので、昨日ワレモコウと黄色い花を買って花瓶に挿しました。
    ドライフラワーにしてもいいですし。
    2022年09月18日 11:23
  • 長さん

    コスモスさん、コメントありがとうございます。
    カラタチの花はいかにもミカン科という花ですね。実は大きくなく、直径は4cmくらいです。
    コムラサキの実、紫に色づくと綺麗ですね。
    ワレモコウを生花の素材にしましたか。季節の花を添えると良いですね。
    2022年09月18日 12:31

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