市川市「万葉植物園」にて(1) コナラ、カリガネソウ、ヤブラン、ツルボ、ヤマハゼ、ヤマハギ、ケイトウ

 9月10日、市川市にある「万葉植物園」に行ってきました。
 先日、地図ソフトで「ゆいの花公園」付近を眺めていたら、画面下の方(南)から「万葉植物園」と言う文字が目に飛び込んできました。JR武蔵野線市川大野駅の直ぐ近くなので、早速行って見ることにしたのです。入口は、長い上り階段の先にあり、駅から5分ほどかかりました。


植物園の入口です。何やら普通の民家の裏口みたいな感じです
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 2階建ての民家は管理棟で、休憩室兼展示室や資料室兼図書室及び16畳の和室研修室があるそうですが、当面、利用中止になっていました。

管理棟右手の格子戸は開放されており、ここから入ります
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園内案内図です(図の上側を武蔵野線が走っています)
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 市川市は、古くは国府が置かれ国分寺も建立された由緒ある地であり、真間の手児奈の伝説(詳しくはこちら)も残されており、深い歴史につつまれる街です。これを背景に、緑溢れる潤いのある街づくりの一環として、ここに万葉植物園を開園いたしました(1989年)。
 ここには約155種類の植物を万葉時代の自然が偲ばれるよう構成し、万葉人の文化に親しめるよう、当時の生活に使われていた有用植物の栽培区を設けています。万葉の小径をゆっくりと散策すれば、四季折々に美しい草本を楽しんでいただけることでしょう。(案内板より)

 前置きが長くなりました。以下、園内を反時計回りに歩いて見た花や木です。写真の下は、万葉集に収録の歌です。一部の木や花にはそれらを紹介した立て札もありました。


ミズヒキ(水引)
タデ科ミズヒキ属の多年草。花期は7~11月。万葉集には出てこない
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コナラ(小楢)
ブナ科コナラ属の落葉広葉樹。万葉名は、ははそ、なら
奈良の都のナラは、コナラの万葉名ならに由来するという
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 下つ毛野 みかもの山のこ楢のす まぐはし子ろは 誰が笥か持たむ
 巻14-3424


カリガネソウ(雁金草)
シソ科カリガネソウ属の 多年草。北海道、本州、四国、九州の山地に自生
別名:ホカケソウ(帆掛草)など。花期は8~9月。万葉集には出てこない
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ヤブラン(藪蘭)
クサスギカズラ科ヤブラン属の常緑多年草。東アジアに分布
花期は8~10月。万葉名はやますげ(山草、山菅)
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 ぬばたまの 黒髪山の やま菅に 小雨降りしき しくしく思ほゆ
 柿本人麻呂  巻11-2456


ツルボ(蔓穂)
キジカクシ科ツルボ属の多年草(球根植物)日本、東アジアに分布
花期は8~9月。万葉集には出てこない
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ヤマハゼ(山櫨)
ウルシ科ウルシ属の落葉小高木。関東地方以西〜沖縄の山地に分布
紅葉が美しい。万葉名は、はじ、はにし
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 すめろきの 神の御代より はじ弓を 手握り持たし 真鹿矢(まかごや)を 手挟み添えて・・・ 大伴家持 巻20-4465

園内の風景その1
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萩のトンネル
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ヤマハギ(山萩)
マメ科ハギ属の落葉半低木。アジア原産
花期は7~10月。万葉名は波疑・波義・芽子・波岐・山萩
万葉集で1番多く詠まれているのはヤマハギで、その数は141首もある
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 我妹子に 恋ひつつあらずは秋萩の 咲きて散りぬる 花にあらましを 
 弓削皇子 巻2-120


ケイトウ (鶏頭、鶏冠)
ヒユ科ケイトウ属の一年草。奈良時代に中国経由で渡来した
万葉名は韓藍(からあゐ)・鶏冠草・鶏頭草・鶏頭
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 我がやどに韓藍蒔き 生ほし枯れぬれど 懲りずてまたも 蒔かむとぞ思ふ
 山部赤人 巻3-0384

 2022年9月10日撮影。

(つづく)

この記事へのコメント

  • river

    万葉集は4,516首の歌が収められています。すべて漢字(万葉仮名を含む)で書かれています。その内植物を示すものはおよそ180種(草本82、木本笹竹78など)ですが現代名と異なる植物も多くおよそ300種類あります。各地に万葉植物園がありますね。ぐんまフラワーパークにも「万葉の小径」が作られたのですが今は見る影もありません。
    余談ですが定年後ゆっくり読もうと思い万葉集の本を読もうと思い何冊も持っているのですが巻5以外は未だ果たしていません。
    2022年09月13日 13:34
  • 信徳

    カリガネソウは葉を千切ると臭いですが紫蘇の葉を千切って
    臭うのが濃い感じ、そんなに嫌な臭いですは有りません。(今嗅いできました。笑)ヘクソカズラも同じように説明に臭いと書いてあるとそう思い込んでしまいます。私の鼻が異常でしょうか?
    2022年09月13日 15:19
  • eko

    万葉の時代から親しまれた植物が集められた公園なんですね。地図を見ると広いですね。入口の管理棟を見る限りそんな風には見えません。
    万葉集とは関係なくてもカリガネソウが素敵です。
    ヤブランは花より黒い実が愛でられたんですね。
    ハギのトンネルが凄いですね。
    2022年09月13日 17:49
  • nobara

    こちらにもお鷹の道の国分寺に万葉の植物園があります。
    市川は由緒があるんですね。
    お歌と絡ませてみて廻るのも楽しげですね。
    わが家の玄関前にはシンミズヒキがわんさか茂っています(^o^)丿
    カリガネソウが咲き始めてるんですね~
    ツルボは散歩道の植え込みで発見しました(大群生)
    ヤマハギのトンネル、秋の風情でいいんですね~
    石化の鶏頭ですね@@
    N・everyでやっていましたよ
    花と思われるところが茎だと説明してました(笑)
    2022年09月13日 17:58
  • 無名子

    こんばんは!
    万葉植物園という名前だけでもロマンを感じますとね (^o^)
    万葉集に限らず、色んな歌集や俳句に花が詠まれていますね。
    時々、ブログのネタに困って紐解いてます。
    2022年09月13日 19:11
  • なおさん

    市川というと、真間の手児奈という伝説の美女のハナシが有名で、万葉集にも詠まれていますね。

     万葉植物園というと、大学の頃を思い出しますねえ。僕は国文科で万葉集が専攻でしたが、大伴家持の植物詠についてが卒論のテーマだったりして、若気の至りでお恥ずかしいことでした。万葉集を読み出したのは、高校生の頃ですが、大学ともなると、講義で使うのは万葉仮名の本ですから、読むのもタイヘンなのです。

     あちこちで万葉植物ゆかりのものが見られるのは楽しいですよね。
    2022年09月13日 19:59
  • 長さん

    riverさん、コメントありがとうございます。
    万葉集に植物名が入っている歌の数をネットで調べたのですが、研究者?によって数が異なるので、困っているのです。膨大な数の歌の中から、昔の植物名で探すのですから大変だろうと思います。一番多いという萩の歌でも140~144とばらつきがあるんです。
    私は古文が苦手だったので、万葉集には1冊たりとも目を通したことがないので、にわか勉強しています。
    2022年09月13日 21:18
  • こんばんは。
    万葉植物園、入り口の格子戸は趣きが有ります。
    万葉集にゆかりの花木類が沢山有るようですね。
    萩のトンネル、可愛いヤマハギが咲き始めて通ってみたいです。
    萩は、万葉集の中にも多く詠われてるそうですね。
    万葉植物園、様々な植物を四季折々、楽しめますね。
    2022年09月13日 21:21
  • 長さん

    信徳さん、コメントありがとうございます。
    カリガネソウの葉は切り口から臭いが出るのですね。植物園でしか見たことが無いので、千切ってみるわけにもいきません。
    ヘクソカズラはそこら辺にあるので、嗅いでみようと思えば出来るのですが、試してみたことはありません。
    2022年09月13日 21:21
  • 長さん

    ekoさん、コメントありがとうございます。
    この植物園の広さは約3300平米だそうなので、約1000坪ですね。ですから、そう広いとは言えません。思うに、個人の土地と建物を買い取って、少々手を加えた・・・、そんな感じの植物園でした。
    万葉集に出てくる花だけだと飽きられてしまう可能性があるのでしょうね。
    2022年09月13日 21:27
  • 長さん

    nobaraさん、コメントありがとうございます。
    いわゆる万葉植物園は、国分寺も含めて、都内に5個所もありましたよ。
    万葉集は勉強したことがないので、ブログを書くために、にわか勉強しています。
    お宅の玄関前にシンミズヒキは繁っていますか。ミズヒキやツルボは増えますよね。
    ハギのトンネル、秋が深まれば天井が出来るでしょうね。
    石化のケイトウは茎の先端が2,4,8,16と分岐していって、先端に花が咲くと言うことだそうですよ。
    2022年09月13日 21:41
  • 長さん

    無名子さん、コメントありがとうございます。
    万葉植物園、群馬県には伊香保町と県立館林高校にあるそうですよ。
    今までに、花の写真に歌や俳句を添えるなんてしたことがなかったので、にわか勉強しています。
    2022年09月13日 21:44
  • 長さん

    なおさん、コメントありがとうございます。
    大学で万葉集を専攻されましたか。それは凄いですね。私は高校の古文の時間には先生の似顔絵ばかり描いていて、殆ど勉強しませんでした。
    万葉集は漢字ばかりですし、古い読み方をしますから、勉強するのも大変だったでしょうね。
    私はこの歳になってにわか勉強です。
    2022年09月13日 21:50
  • 長さん

    心さん、コメントありがとうございます。
    格子戸といっても、写真じゃ分りませんが、アルミ製なんですよ。
    万葉集なんてかけらも勉強していませんでしたから、これも載っているんだ、これは載っていそうだけど、なんて思いながら、見て回っていました。
    ハギはもっと伸びそうなので、秋が深まれば完全にトンネルになりそう。
    ハギは万葉集で一番多く詠われている花で、2番目は梅なんですって。
    2022年09月13日 21:56
  • yoppy702

    たまたま見つけられたんですね。
    スグに行ってみるところが、さすがです。(^^)
    入口の感じからすると、ここは、市川市の無料施設ですか?
    でも、マップと園内風景の画像を見ると、イイ感じの植物園ですね。
    こちらにも万葉植物園という所はありますが、以前に行った時は、時季が良くなかったのか、あんまし花が咲いてませんでした。(^^ゞ

    市川市が、由緒ある地というのは知りませんでした。
    由緒あるという事は万葉ゆかりの地って感じ?
    「真間の手児奈の伝説」読みました。
    伝説とか昔話って好きなんで。(^^ゞ
    手児奈さん、美しいだけでなく、心根も優しい方やったんですね。
    2022年09月13日 23:52
  • すーちん

    おはようございます
    道端に咲いていたケイトウ
    種をまきました
    夏からズットさいてます
    2022年09月14日 07:16
  • 長さん

    yoppy702さん、コメントありがとうございます。
    ネタ切れ間近だったので、これ幸いと行ってきましたよ。駅近くだし、入園無料なので、季節を変えて何度か行ってみたくなりました。
    昔は、江戸川を越えた直ぐの所に国府が設けられ、現在でも国府台という地名が残っています。手児奈伝説が残る真間はその近くです。
    2022年09月14日 10:04
  • 長さん

    すーちんさん、コメントありがとうございます。
    ケイトウはかなり強い植物のようで、こぼれ種でよく増えるようですね。-
    2022年09月14日 10:05
  • ジュン

    ヤブラン
    わんさか咲いていますが
    万葉名はやますげいいですね
    ヤマハギのトンネル風情があり
    歌と共にお花を愛でるのも粋ですね
    2022年09月14日 10:49
  • 長さん

    ジュンさん、コメントありがとうございます。
    万葉集に出てくるやますげは、カヤツリグサの菅との意見もありますが、ここではヤブランの方を採用していました。
    ハギのトンネル、面白いです。もっと伸びて、天井まで行きそうですが、横にも伸びるから人が通れなくなるかも(笑)。
    2022年09月14日 14:01
  • コスモス

    万葉がつく植物園は数か所頭に浮かびますね。
    市川市は由緒ある地ですか。
    数十年前友人が住んでいたので彼女の家に行ったことがありますが、町は全く歩いていないのでほぼ未知の地ですね。
    小さくても近くにいろいろあるんですね。
    カリガネソウは今頃の花でしたか。
    どこかで見たいですが・・・。
    万葉集で一番多く詠まれているのがヤマハギですか。
    そろそろ馬場花木園のハギのトンネルも色づいている頃でしょうか。
    2022年09月14日 14:14
  • 長さん

    コスモスさん、コメントありがとうございます。
    市川市は奈良時代に下総の国府が置かれた所で、国分寺も出来ています。
    カリガネソウの花期は8~9月となっていますが、最近は暑いので9月頃からの開花ですね。
    ハギが読み込まれている歌は万葉集には141もあるそうですが、研究者によってその数にばらつきがあるようです。
    2022年09月14日 20:57

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