前回は出物系統の親木の内、一重の花が咲くものを紹介しましたが、今回は出物系統の親木で牡丹咲き品種の紹介です。変化朝顔の世界では、これを「親牡丹」と呼んでいます。
牡丹咲きは、雄しべも雌しべも花弁に変化した状態の花のことを言い、雌しべがないため種子はできませんが、「親牡丹」ですから、雄しべや雌しべが一部残っていて、種が出来るのでしょう。
説明は、銘、葉の特徴、花の特徴の順です。なお、品種の番号は整理のために私が付けたものです。
出物系統・親牡丹1
青/縮緬/立田葉 ・ 白/筒紅/台咲/牡丹
出物系統・親牡丹2
青/林風(注)/常葉 ・ 白/丸咲/牡丹
(注)林風とは、』葉の葉脈が白いものを言うらしい
出物系統・親牡丹3
青/打込/弱渦葉 ・ 青/丸咲/牡丹
出物系統・親牡丹4
青/斑入/抱/常葉 ・ 淡藤鼠色/丸咲/牡丹
出物系統・親牡丹5
黄/抱/蜻蛉葉 ・ 紺/吹雪/丸咲/牡丹
(名札を撮り間違えたらしい)
出物系統・親牡丹6
黄/抱/蜻蛉葉 ・ 淡紅/覆輪/丸咲/牡丹
出物系統・親牡丹7
青/打込/弱渦葉 ・ 青/丸咲/牡丹
出物系統・親牡丹8
青/蜻蛉/丸笹葉 ・ 紅/覆輪/切咲/牡丹
出物系統・親牡丹9
青/渦葉 ・ 江戸紫/丸咲/牡丹
出物系統・親牡丹10
黄/打込/笹葉 ・ 紅/覆輪/切咲/牡丹
変化朝顔の名称について
変化朝顔には特異な名称が付けられています。第一次ブーム(文化・文政期)の番付表にはその走りが見られますが、第二次ブーム(嘉永・安政期)に基本が出来上がります。それは、葉の色、模様、質+花の色、模様、花弁の形、咲き方、花弁の重ねを順番に記述し、必要に応じて付加していくというものです。
上の、出物系統・親牡丹1の場合、次の行に「青/縮緬/立田葉・白/筒紅/台咲/牡丹」と、分りやすいように標記しましたが、実際には「青縮緬立田葉白筒紅台咲牡丹」と記述されます。青字の部分が葉についての記述、赤字の部分が花についての記述というわけです。
(くらしの植物苑のパンフレットからの引用を含む)
変化朝顔の栽培の歴史
朝顔は古くから多くの人々に親しまれてきました。特に江戸時代以降、文化・文政期、嘉永・安政期、明治・大正期など、繰り返し朝顔ブームが訪れ、変化朝顔とよばれる、朝顔に見えないような多様な形の花と葉を持つ朝顔が創り出されてきました。特に、朝顔は一年草であるにも関わらず、種子を結ばない変異も種子によって維持してきたことは世界的に見ても特異なもので、幕末の嘉永・安政期にはきわめて多くの品種が創り出されていたようです。
しかし、大正期以降、現在でも広く栽培されている大輪朝顔の栽培が盛んになる一方、変化朝顔の愛好家は次第に減少し、第二次世界大戦後の変化朝顔はわずか数名の愛好家によって維持される状況になりました。幸いなことに、江戸期に起源を持つ変化朝顔の変異の多くは、愛好家や研究者の努力によって現在まで維持されているのです。
そこで、江戸時代以降の独創的な知識と技術を駆使してつくり上げられた伝統の朝顔を広く知っていただき、人と植物との関わりを見るべく、当苑では1999年以降、歴史資料としてこれらの朝顔を展示してきました。
(くらしの植物苑のHPから引用)
朝顔の系統保存の歴史
上記の「歴史」を更に詳しく説明した文書を見つけました。
ご興味があればお読み下さい。1枚目の画像クリックでPDFが開きますから、印刷も可能です。
次回は、出物(種が採れない)の品種を投稿します。
(つづく)
この記事へのコメント
river
「朝顔の系統保存の歴史」、興味深く読ませていただきました。
もこ
nobara
流石に葉っぱはアサガオだろうと見当はつきますが。
アサガオ、こんなにも奥が深いのですね@@
ブルーのなど、キキョウの八重のようにも見えますね。
ビックリクリクリしました。
名前の付け方も語彙力を感じます(^o^)丿
無名子
牡丹咲き、ここまで来ると、朝顔? と思ってしまいます。
朝顔として見ると違和感、
でも他の花と思うと素敵な花と思えます。綺麗ですよね (^o^)
eko
少人数の人たちの努力で残り、今日まで続いてきてよかったです。
個人的にはブルー系の花が良いですね。
信徳
ボタン、ダリアのようです。
変わったアサガオを作出しているのですね。
長さん
ここは以前から、正木、親木、出物の3種類が展示されています。ただ、展示された朝顔は、系統と名前しか表記されていません。次回からいよいよでものの紹介になりますが、この親木からこんな変化が出ましたよと、親子関係(兄弟関係)を示すような展示方法があっても良いのにと思います。
「朝顔の系統保存の歴史」、お読みいただけましたか。ありがとうございます。
長さん
親牡丹が何種類もありますから、それから出来る子供も少しずつ変ったものが色々出来てきます。
長さん
これらの親牡丹から、更に変化したものが色々出てくるわけですから、中にはとても変ったものが出て来る可能性があります。次回から投稿する出物の中には、これが朝顔なの?と首をかしげるものが登場しますよ。
長さん
私たちの思い描く朝顔は一重の花ですから、牡丹(八重)が登場すると面食らってしまいますよね。
次回はもっと変ったものが登場しますよ。
長さん
普通の人は八重(牡丹)の朝顔を見せられたら「嘘でしょう」ときっと言われると思いますよ。
マニア中のマニアが種を保存してくれていたお陰で、色々な朝顔が見られるのですから、ありがたいです。
長さん
雄しべや雌しべが花弁に変る変化は他の植物でも起こることですが、朝顔は変化しやすい遺伝子を沢山持っているお陰で、様々な花や葉の変化を見る事が出来るわけです。いわば、想定外の変化というわけです。
イッシー
華やかでいて、レトロモダンな雰囲気もあり。
モダンっていうのかな~!江戸の文化はすごかったんだな~って改めて感心します。
ジュン
これも朝顔なんですね
牡丹咲きは見たことがなかったです
歴史があり驚いています
すーちん
牡丹咲
花だけ見ていると
アサガオとは思えませんねー
長さん
江戸時代の庶民の趣味はかなりバラエティに飛んでいたようですが、園芸の分野も様々でした。変化朝顔は種さえ入手できればあまりお金がかからずに楽しめたのでしょう。
長さん
江戸時代の人たちは変化朝顔に風流を感じたのでしょうね。現代の変化朝顔は、戦後、愛好者が激減しても、昔から継続されてきた種を保存していた方がおられたお陰です。
長さん
牡丹咲きは葉も朝がおらしからぬものがあり、初めて見た方は驚かれるでしょうね。
ロシアンブルー
雄蕊と雌蕊が少し残って咲いたものが親木になるんですね。
種が残らないのになぜ?と思いました。
江戸時代から残してくださる方がいたおかげで現在見ることが
出来、貴重ですね。
長さんの毎日のブログ更新に元気を頂き、楽しみにしていました。今度、ウエブリブログ終了ということで考えまして、昨年より他社と併設していたブログを今後続けることにしました。いろいろ助けて頂きありがとうございました。
これからも励みにさせていただきます。
ありがとうございました。時々お邪魔させていただきます。
長さん
江戸時代は盛んだった変化朝顔作り、今では少ない愛好家の皆さんが栽培しておられます。朝顔の変化は遺伝学的にも重要視されているので、九州大学で研究が続けられているほか、この国立歴史民俗博物館でも保存に力を入れているわけです。
ウェブリブログの閉鎖は昨日の記事で知りまして、早速、別ブログの方をWebリーダーに登録しました。今後はそちらにお伺いします。