今回は、前記事に続き、「水戸徳川家の蘭」展に出展されたパフィオペディルムですが、圀斉氏が交配親として栽培されていた品種の紹介です。

パフィオペディルム・メドウ・スィート ‘ピュリティ’
Paph. Meadow Sweet 'Purity’ (Chilton x F.C.Puddle)
英国の育種家が作出し、1956年に英国園芸協会に登録された品種
圀斉氏は、この花を初めて見た時、白花の美しさに魅了され、
白花作出に取組むために栽培していた

パフィオペディルム・メドウ・スィート ‘マドンナ’
Paph. Meadow Sweet 'Madonna’ (Chilton x F.C.Puddle)
これも圀斉氏が栽培していた品種

パフィオペディルム・エフ・シー・パッドル
Paph. F C Puddle (Actaeus x Astarte)
1932年に英国王立園芸協会に登録され、その後、交配親として
よく用いられる白花名花。圀斉氏も交配親として栽培していた

パフィオペディルム・フィプス
Paph. Phips (Aureum x Boltonii)
1925年に英国王立園芸協会に登録され、その後、交配親として
よく用いられる白花品種。圀斉氏も交配親として栽培していた

取材中の私(実は、鏡に写った姿を左右反転したもの)

徳川圀斉氏とランの出会い
徳川圀斉氏(第14代水戸徳川家当主)は、19歳のある日、知人からデンドロビウムを贈られたのをきっかけに、ランの収集と栽培を始めたそうです。
ランに対する愛情は大変深く、第二次世界大戦の空襲で火の手が上がったときも、家財道具より先に池の中に投げ込んで、戦火から救ったというエピソードが残っているくらいです。
圀斉氏が興味を持ったのは「貴婦人のスリッパ」の英名を持つパフィオペディルムというランでした。英国・米国などの世界的に有名な蘭園から、優秀なランを多数輸入し、自らの手で交配を行いました。新しい品種を作り出すのに大変熱心で、実際に作られた品種に旧水戸徳川家の領地の地名が多く付けられています。
圀斉氏が愛したランは、没後、神奈川県にあった向ヶ丘遊園で管理されていました。しかし、2002年の閉園に伴い、2001年11月から3回に分けて水戸市植物公園に搬入され、同公園が管理することになりました。水戸の水や太陽の光は、戻ってきたランの栽培環境に合っているようで、のびのびと生育しているそうです。
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熱帯果樹温室にて
東側入口です。外壁清掃や鉄骨塗り直しが済んでいました

一番高いところから見た温室内部

オオナガミクダモノトケイソウ(大長実果物時計草)
トケイソウ科トケイソウ属の常緑多年草。原産は熱帯南アメリカ
別名:オオミトケイソウ、ジャイアントパッションフルーツ。実は食用になる


ダンドク(檀特)
カンナ科カンナ属。原産は南アメリカ
別名:食用カンナ、カンナ・インディカ、英名:インディアン・ショット


フブキバナ(吹雪花)
シソ科テトラデニア属の常緑小低木。原産はアフリカ
学名:テトラデニア・リバリア、英名:ジンジャー・ブッシュ
名の由来は、白い小花が多数群がって咲く様子を吹雪に見立てた
2017年に閉園した長崎亜熱帯植物園から寄贈されたもの


ルリハナガサ(瑠璃花笠)
キツネノマゴ科エランテムム属の常緑小低木または多年草
原産はインド。別名ブルーセージ、エランテムム・プルケルム


次回は観賞大温室で見た花などを紹介します。
(つづく)
この記事へのコメント
なおさん
フブキバナも清楚で良い感じです。花のアップはいかにもシソの花の雰囲気ですね。
nobara
長さんも完ぺきなお姿ですね。自撮り?
鏡を反転させたのですね。胸元から撮影?
とってもよく撮れています(^o^)丿
オオミトケイソウも綺麗に撮れましたね。
食用カンナは花弁が細いですよね。
食用なのに?音でよむとダンドクが怯みます。
フブキバナはアフリカ原産とは思えぬ和風の花です。
白花サクラタデを思わせますね(*^-゚)⌒☆
イッシー
もうないんですか。
でも水戸市植物園で大切にされて徳川さんも喜んでいるんじゃないですかね。面白いトケイソウにフブキバナも元気だな~
コスモス
向ヶ丘遊園には小さい頃よく行きましたので、親しみが湧きました。
故郷である水戸の植物公園に戻り、のびのびと生育できてよかったですね。
ダンドクはカンナの原種ですか。
花弁が細いですね。
eko
閉園した向ヶ丘遊園から水戸へ戻って生育環境があって生き生きと成長しているのはほんと良かったです。
フブキバナは初見です。シソ科らしい小花がたくさん咲いて名前そのままで素敵です。
river
オオナガミクダモノトケイソウは見たことがありませんがパッションフルーツとしては変わった色をしていますね。
はるる
相当なものだったのでしょう。
でもそういう思い入れは幸せです。
温室花も美しいものばかりです。
フブキバナは変わっていますね。
信徳
凄い植物園を水戸市は持っているのですね。
うふふ
そのおかげでこんな美しいお花が見られるのですから、本当にありがたいことです。
水戸の環境が合っていてのびのびと生育しているそうですが、お世話をする方々もうれしいでしょうね。
長さんの後ろの額はボタニカルアートですね。
この絵も興味津々です。
長さん
徳川圀斉氏のランが何故向ヶ丘遊園に引き継がれたかは分りませんが、水戸市植物公園が管理するのはランにとっても良いことですよね。
フブキバナは初めて見ました。花が無数に咲くのが良いですね。
長さん
鏡に映った姿をカメラのバックモニターで確認してシャッターを押したものです。今のカメラはバックモニターの角度が変えられるので、便利です。
オオミトケイソウの実は見たことがないですが、花も大きかったです。
ダンドクは沖縄で見たことがあります。昔は根茎を食用にしたとか。
フブキバナ、初めて見ましたが、アフリカ原産とは思えませんよね。
長さん
どういう縁で向ヶ丘遊園に二季撮られたのかは分りませんが、この植物公園に移管されて良かったですね。
オオミトケイソウ、実が大きいそうですが、花も大きかった。
長さん
ご遺族はなぜ向ヶ丘遊園に圀斉氏のランを託したのでしょうね。蘭たちも水戸市植物公園に引き取られて良かったと思いますよ。向ヶ丘遊園のバラ園は現在の生田緑地ばら苑だそうですね。
ダンドクは江戸時代の初期に日本に持ち込まれたそうです。
長さん
水戸市植物公園に引き取られて、パフィオペディルムたちも喜んでいるでしょうね。
フブキバナは初めて見ましたが、随分と花付きの良い品種ですね。
長さん
なぜ向ヶ丘遊園に徳川圀斉氏のパフィオペディルムが引き取られたのでしょうね。調べても、その経緯が分らないのです。
オオミトケイソウの花は、なんかどぎつい色ですね。実は大きいそうですが、花も大きかったです。
長さん
なぜ向ヶ丘遊園に徳川圀斉氏のパフィオペディルムが引き取られたのか、興味があったので調べて見たのですが、分りませんでした。
フブキバナは和の雰囲気で、熱帯アフリカの花とは思いませんよね。
長さん
パフィオペディルムはランの中では交配がし易い品種なのだそうです。小型の鉢でもよく育つし、冬も10℃以上あればOKだそうですが、我が家では咲かせることが出来ませんでした。
水戸市植物公園の園長、西川綾子さんは水戸では有名人だそうです。
長さん
圀斉氏が残したパフィオペディルムたちも、水戸に戻れて喜んでいるでしょうね。個々には西川綾子さんという名物園長がおられるので、育成には全く不安がありません。
ボタニカルアート、市民の方の作品ですが、よく描けていましたよ。
月奏曲
こんなところにもご縁があったとは…
オオナガミクダモノトケイソウ、これちょっと変わったトケイソウですねぇ…名前通り食べれるんだw
秋月夕香
取材中の長さん~鏡にうつったご自分の写真は反転したらこうなるのですか。このアイデァもすごくいいですね。
オオナガミクダモノトケイソウ~このようなトケイソウめずらしいです。ダンドクこれはいただけるのですか~食用~それもすごいです。世界にはすごいもの一杯あるのですね。
すーちん
トケイソウの1種ですか
形も個性的色も印象に残り
ますねー
ロシアンブルー
情熱を注ぐ圀斉氏に感動します。
大切に育てた植物、生命あるものですから戦火から逃れ
るためにも池に投げ込みたくなりますよね。
あちこち預けられても、やはり生まれ育ったところが一
番の適地ですよね。
ジュン
成長して生き生きと出来て良かったです
向ヶ丘遊園は何度も行きました
オオナガミクダモノトケイソウ
実をいただいてみたいですね
長さん
小田急電鉄が赤字になったら、向ヶ丘遊園を直ぐに売り飛ばしたらしいです。
オオミトケイソウですから、かなり大きな実がなるのでしょうね。クダモノトケイソウの実は賞味したことがないです。
長さん
お殿様の手慰みどころか、かなりの情熱を注いだのでしょうね。ただ、パフィオペディルムは冬場、10℃以上あれば良いのD、育て易いらしいです。
トケイソウは副花冠と呼ばれる部分に特徴があるのですが、この品種はその色が派手ですね。
昔のことですが、ダンドクの根茎を食用にしたそうです。
長さん
トケイソウの花の中では一番大きいそうです、花色も派手ですね。
長さん
徳川圀斉氏は「好きこそものの上手なれ」を地で言った人だったのですね。
とっさのこととは言え、池に投げ込んだのは正解でしたね。
長さん
水戸に戻ったのは、蘭たちにとっては里帰りみたいなものですから、安心したでしょう。
オオナガミクダモノトケイソウの果実の大きさは20~30cm、重さは2kgにもなるそうですよ。どんな味なんでしょうね。