水戸市植物公園にて(2) 水戸徳川家の蘭(その1) 圀斉氏が作出したパフィオペディルム

 1月12日、4年ぶりに行った水戸市植物公園に行ってきました。
 今回は「水戸徳川家の蘭」展に出展されたパフィオペディルムの色々を紹介します。


展示の様子です
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水戸徳川家の蘭 ~限りなく白い花をめざして
IMG_0961_1.JPG 水戸徳川家の14代当主の圀斉(くになり)氏(明治45(1912)年~昭和61(1986)年)は洋ランのパフィオペディルムの育種家です。
 限りなく白い花を理想とされたので、残されたランは白い花が中心です。白い寒水石が採れる真弓山にちなみ、‘Mayumi’と名づけられた名花も誕生し、英国のオーキッドリストには氏が交配した数多い品種が登録されました。咲いた花はパステル画や油絵で描かれ、細かな観察記録も残されています。
 水戸市植物公園では平成13年度から栽培管理を引き継ぎ、観梅期を含めた開花期に公開してます。今回の展示会には、圀斉氏が交配親で使ったランを含めて、展示されました。
 写真は、昭和45年発行の園芸誌ガーデンライフに掲載された、蘭を世話する圀斉氏。

 先ずは、圀斉氏が作出された品種の紹介です。


パフィオペディルム・スワン ゴールド
Paph. Swan Gold (F.C.Puddle x Sweet Hermony)
圀斉氏は1974年に英国王立園芸協会に登録申請したが、タッチの差で英国
のラトクリフ氏に先に登録された。圀斉氏は「Kohraku」と命名していた
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パフィオペディルム・スワン ゴールド ‘カントク’
Paph. Swan Gold 'Kantoku'(F.C.Puddle x Sweet Hermony 'Midorigaoka')
スワンゴールド(圀斉氏作出名:コウラク)の兄弟株
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パフィオペディルム・スワン ゴールド ‘ミワ’
Paph. Swan Gold 'Miwa'(F.C.Puddle x Sweet Hermony 'Midorigaoka')
スワンゴールド(圀斉氏作出名:コウラク)の兄弟株
ミワという名前は、水戸市内の町名「見和」に由来すると思われる
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パフィオペディルム・スワン ゴールド ‘ミユキ’
Paph. Swan Gold 'Miyuki'(F.C.Puddle x Sweet Hermony 'Midorigaoka')
スワンゴールド(圀斉氏作出名:コウラク)の兄弟株
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パフィオペディルム・マユミ
Paph. Mayumi(Denehurst x F.C.Puddle)
1968年登録。「マユミ」という名前は阿武隈山系から続く常陸五山の
一つ「真弓山」が由来と思われる。咲き進むと全体的に白くなる
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パフィオペディルム・マユミ ‘カンスイ’
Paph. Mayumi 'Kansui'(Denehurst x F.C.Puddle)
マユミの兄弟。個体名を阿武隈山系の真弓山で採れる、白い石で
有名な寒水石に由来して、‘カンスイ’ と名づけたと思われる
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パフィオペディルム・カシマ ‘ナダ’ プライユリー
Paph. Kashima 'Nada' (Golden Wren x Elizabeth Keeley)
1965年、英国王立園芸協会に登録申請が行われた
Kashima 'Nada' は、鹿島灘に因んで付けられたと思われる
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パフィオペディルム・サンノマル
Paph. Sannnomaru (Orchilla 'Chilton x Mayumi)
2003年に、水戸市植物公園によって英国王立園芸協会に登録された
水戸市内の地名「三の丸」に因んで付けられた
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パフィオペディルム・ギンレイ
Paph. Ginrei(Chardimoore x Maymi)
生前に交配・育成されたが、品種未登録のまま他界された
1991年に向ヶ丘遊園で英国王立園芸協会に新品種として登録を行った
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パフィオペディルム・ユキチドリ
Paph. Yukichidori (Kashima x F.C.Puddle)
没後の1991年に英国王立園芸協会に登録された
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パフィオペディルム・ドリーミー ホワイト
Paph. Dreamy White (Yumidono 'Gekko' x F.C.Puddke)
1981年、矢部氏が英国王立園芸協会に登録した
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パフィオペディルム・ヤミゾ ‘ミドリガオカ’
Paph. Yamizo 'Midorigaoka' (Goldo Mohur x Ipsoden)
1966年に英国王立園芸協会に登録された品種
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パフィオペディルム・サクラガワ
Paph. Sakuragawa (Meadow Sweet 'Madonna' x Warpaint)
2003年に、水戸市植物公園によって英国王立園芸協会に登録された
水戸市内の地名「桜川」に因んで付けられた
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パフィオペディルム名称未定
Paph. Redstart x Shikou
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 2022年1月12日撮影。
 次回は、圀斉氏が交配種を作り出すために栽培していた品種を紹介します。
(つづく)

 都合により、訪問が遅れることがあります。

この記事へのコメント

  • なおさん

    花色を限りなく白に近付ける、という理想のもとに交配種を作り出そうといろいろな努力をされてこられたのですね。いろいろ清楚なパフィオは素晴らしいです。

     僕も以前、エビネの人工交配をしてみようとビンに無菌培地を準備して播いたことがありますが、シロウトのかなしさで気をつけたつもりでもカビが生えたりして、思うように行かなかったことがありますから、本格的に育種をしようとなったら、無菌室など設備がいりますねえ。
    2022年01月15日 12:22
  • イッシー

    凄いですね!流石ですね水戸の徳川様。
    どことなく気品を感じますね。
    2022年01月15日 16:19
  • eko

    白いパフィオペディルムは個人的に好きなので、どれも清楚で美しいです。中でもスワン ゴールド ‘ミユキ’が素敵です。
    好みの花を作り出すのは長い年月とたゆまぬ努力が必要だったのでしょうね。心底好きでなければ出来ない作業ですね。美しい花々を有難うございます。
    2022年01月15日 16:25
  • nobara

    蘭も信念をもって育てられたのですね。
    そういう環境にも恵まれた方だったのですね。
    清楚という名がぴったりのパフィオですね。
    見入ってしまいます。
    やっぱり水戸の徳川様ですね
    慶喜公もその流れの頂点にいらっしゃるんですよね。
    いろいろの才能に恵まれた方でしたね。
    2022年01月15日 16:26
  • 秋月夕香

    こんばんは。昔からお花好きな人達で色々と改良されてきたのですね。花も歴史とともにありますね。
    らんはやはり華やか,品もあります。きっとご自慢の蘭ばかりなのでしょう。
    2022年01月15日 16:42
  • 信徳

    水戸の偕楽園や西山荘ではランなど見た記憶も有りません。
    ランは別棟で研究されていたんですね。水戸黄門、徳川慶喜と
    歴史の流れの中でランの研究がなされていたとは驚きです。
    2022年01月15日 17:00
  • river

    パフィオペディルムは袋状の唇弁が特徴的なランですが側花弁と側萼片が合体して1枚に見えますね。最近はこの側花弁が丸いブラキペタルム亜属のような花が人気のようですが水戸徳川家の蘭はパフィオペディルム亜属のようです。
    圀斉氏が白に拘って作成したランが見事です。
    2022年01月15日 17:19
  • はるる

    限りなく白い花ですか。
    白い花ってきれいですね。
    少しずつ、それでも違っていて楽しめます。
    水戸の植物苑園へお出かけされたのですか。
    画や観察記録も見ることができるのですね。
    2022年01月15日 18:07
  • 長さん

    なおさん、コメントありがとうございます。
    私もラン展で業者からパフィオペディルムの開花株を買ったことがありますが、翌年は咲かせることが出来ませんでした。交配となると、それなりの知識に加えて、設備なども必要ですよね。
    2022年01月15日 18:51
  • 長さん

    イッシーさん、コメントありがとうございます。
    「好きこそものの上手なれ」ということわざがありますが、育種、交配ともなると好きだけでは出来ませんよ。
    2022年01月15日 18:53
  • 長さん

    ekoさん、コメントありがとうございます。
    より白いパフィオペディルムを目指したのですが、交配して花が咲くまで育てるのは並大抵の努力では出来ません。それに、意に反した花ができることだってありますからね。
    2022年01月15日 18:55
  • 長さん

    nobaraさん、コメントありがとうございます。
    水戸家のお殿様ですから、お金には困らなかったと思いますが、蘭の育種・交配はお金があれば出来るものではなく、かなりの情熱を注いだのでしょうね。慶喜公も晩年は趣味に生きた人だったようですね。
    2022年01月15日 19:03
  • 長さん

    秋月夕香さん、コメントありがとうございます。
    ランの交配は100年以上の歴史があります。圀斉氏はパフィオペディルムだけに没頭したようですが、世界には色々な種類の交配を行った人々がいます。そうした人たちのお陰で、私たちは美しいランを見る事が出来るわけです。
    2022年01月15日 19:06
  • 長さん

    信徳さん、コメントありがとうございます。
    水戸の偕楽園は徳川圀斉氏が生まれる前に、既に水戸市の管理になっていますから、圀斉氏が蘭の育種に取組んだのは自宅でしょうね。それがどこにあったのかは、少し調べたのですが、分りませんでした。
    2022年01月15日 19:17
  • 長さん

    riverさん、コメントありがとうございます。
    徳川圀斉氏がランを知ったのは知人からデンドロビウムを贈られたのが最初で、直ぐにランの収集と栽培を始めています。氏が白いパフィオを目指したのは、メドウ・スィートと言う品種を見たときからですが、その品種がパフィオ亜属かどうかは分りませんでした。
    2022年01月15日 19:29
  • 長さん

    はるるさん、コメントありがとうございます。
    パフィオペディルムは茶系の花が多いのですが、徳川圀斉氏は白い花を見た瞬間に、その虜になったそうです。
    2022年01月15日 19:31
  • コスモス

    限りなく白に近い花を目指して、たくさんの交配種を作られたのですか。
    水戸徳川家なのでできたのでしょうけど、素敵なことですね。
    白いランは気品があり、清楚な感じがしますね。
    中でもマユミの兄弟のカンスイはピンクがかっているようで、優しい色合いですね。
    兄弟というより姉妹のような?
    2022年01月15日 21:18
  • 月奏曲

    優雅でいいなぁ
    戦前だと貴族階級になるのかしらん?経済的には裕福だったんでしょうねぇ

    別の人が同じ掛け合わせしてるかなにかでタッチの差で負けるのでしょうか?
    2022年01月15日 23:01
  • うふふ

    作品の名に地名を使っているのが、いかにも水戸家のお殿様という感じがしますね。
    一番目の「Kohraku」も、水戸家の下屋敷「小石川後楽園」に由来するのでしょうか。
    水戸徳川家と言うと、ちょっと懐かしい場面を思い出します。
    私の兄が中学生だった頃にボーイスカウトで植樹祭のお手伝いをした写真が家にありました。
    水戸の徳川様がスコップで木を植えているところでした。
    お名前は徳川宗敬さんだったと思います。
    圀斉氏の叔父さんで「緑化の父」と呼ばれ、農学博士だったようです。
    懐かしくて、余計なコメントをしてしまいましたね。ごめんなさい。
    2022年01月15日 23:04
  • 長さん

    コスモスさん、コメントありがとうございます。
    パフィオペディルムは他の洋ランと比べると育て易い方で、子方で取り扱いしやすいし、人工交配も容易ということで、さほど設備にお金をかけなくても良い品種です。
    ‘カンスイ’も白い花弁なのですが、露出不足もあって、本来の色が出ていません。
    2022年01月16日 09:37
  • 長さん

    月奏曲さん、コメントありがとうございます。
    水戸徳川家の直系ですから、我々庶民と比べたら裕福だったでしょうね。
    発明や発見も同様ですが、最初に登録したということに意味があるので、この交配品種だけは残念でした。
    2022年01月16日 09:43
  • すーちん

    おはようございます
    色々な種類を栽培する
    1つの色を追求する
    色々な栽培方法があるんですね
    2022年01月16日 09:46
  • 長さん

    うふふさん、コメントありがとうございます。
    ‘hohraku’が小石川後楽園に因むという可能性は考えられますが、水戸家には偕楽園があるのでどうですかね。
    徳川宗敬さんと徳川圀斉さんは叔父甥の関係ですかね。
    2022年01月16日 09:55
  • 長さん

    すーちんさん、コメントありがとうございます。
    あれこれ栽培するのではなく、パフィオペディルムに絞ったことで成功したのかも知れませんね。
    2022年01月16日 09:59
  • ロシアンブルー

    限りなく白いランをパフィオペディルムで交配しての夢
    を実現出来る環境もあったからこそたくさんの交配種が
    出来、お披露目して多くの人々に好まれるって凄いです
    徳川様の愛おしいお姿ですね。
    2022年01月16日 11:19
  • 長さん

    ロシアンブルーさん、コメントありがとうございます。
    お殿様の道楽とよく言われますが、圀斉氏のパフィオペディルムに注ぐ情熱は並々ならぬものがあったようです。没後、氏が残された株を向島百花園が引き継ぎましたが、現在は、水戸市植物公園で育てています。
    2022年01月16日 12:11

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