つくば植物園にて_2021年5月(8) イオウノボタン、コウトウシュウカイドウ、ケラマツツジ、ヒジハリノキ、ヒメタツナミソウ、マルバハタケムシロ、ヤエヤマスズコウジュ、ホソバフジボグサ、オオシマガンピ

 5月12日に訪れたつくば植物園で見た花などです。
 今回は多目的温室です。ここでは、琉球列島や小笠原諸島などに分布する固有種・絶滅危惧種の展示が行われていました。当ブログで今年3月に紹介済の花は除外しています。


イオウノボタン(硫黄野牡丹)
 ノボタン科のボタン属の常緑低木。北硫黄島の固有変種。基本種のノボタンとは雄しべの形態が異なる。花は一日花。環境省の絶滅危惧II類(VU)
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コウトウシュウカイドウ(紅頭秋海棠)
 シュウカイドウ科シュウカイドウ属の多年草。日本に自生するベゴニア2種の一つ(もう一つは、マルヤマシュウカイドウ)。原産は八重山諸島、台湾、フィリピン。環境省の絶滅危惧II類(VU)
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ケラマツツジ(慶良間躑躅)
 ツツジ科ツツジ属の常緑低木、奄美大島以南~沖縄。名は慶良間諸島にちなんでつけられた。かつては普通に見られたが、近年は園芸目的で乱獲され、個体数が少なくなっている。環境省の絶滅危惧II類(VU)
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ヒジハリノキ(肱張木)
 アカネ科ミサオノキ属の常緑低木。石垣島、台湾、中国に分布。名の由来は、小枝が直角に横に張り出す様子が、人が肘を張っている様子を思わせることから。石垣島ではもともと数が少ない上、道路整備などによる環境悪化によって絶滅寸前。環境省絶滅危惧IB類(EN)。初めて見ました
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ヤクシマスミレ(屋久島菫)
 スミレ科スミレ属の多年草。南西諸島の固有種(屋久島、奄美大島、徳之島、沖縄島北部)。山地や渓流沿いなど湿った環境に分布。沖縄等ではダム建設によって激減している。花弁の長さは1cm程度。鹿児島県:準絶滅危惧(NT)、沖縄県:絶滅危惧II類(VU)。初めて見ました
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ヒメタツナミソウ(姫立浪草)
 シソ科タツナミソウ属の多年草。鹿児島県喜界島固有種。喜界町天然記念物。日当たりが良く、やや湿った環境に生育。草丈は5cm程度。環境省の絶滅危惧IB類(EN)。初めて見ました
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マルバハタケムシロ(丸葉畑蓆)
 キキョウ科ミゾカクシ属の常緑多年草。琉球列島の固有種。海岸の湿った岩場に生育。沖縄島では絶滅。最近、久米島で再確認。花径は1cmに満たない。環境省の絶滅危惧IB類 (EN)
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ヤエヤマスズコウジュ(八重山鈴香需)
 シゾ科シキクンソウ属の多年草。台湾、琉球列島(沖縄島、与那国島)の海岸近くの低地に分布。花期はほぼ周年。花径は10~13mm。環境省の絶滅危惧II類(VU)
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ホソバフジボグサ(細葉藤穂草)
 マメ科フジボグサ属の多年草。フジボグサの細葉変種?宮古島(北限)、石垣島、西表島、台湾、中国、東南アジアに分布。花穂の長さは15~25cm。花は2つ対で咲く。沖縄県で絶滅危惧IA類(CR)
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オオシマガンピ(大島岩菲)
 ジンチョウゲ科ガンピ属の落葉低木。日本固有種(奄美大島、徳之島)。やや明るいリン塩などに生育する。花期は7~8月だが、もう咲いていた。花径は8mm。花弁に見えるが、4裂した黄色い萼片。環境省の絶滅危惧IA類(CR)
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 5月12日撮影。
(つづく)

この記事へのコメント

  • 寿々木

    珍しい花が並びましたね。殆ど見た記憶がありません。ケラマツツジは沖縄東南植物楽園の入り口、左側に歩くと吹雪き花と一緒に咲いていたように思います。
    2021年05月29日 12:50
  • イッシー

    多目的温室ってそんなに広くはないところですよね。
    丁寧に撮られて丁寧な解説が素晴らしいですね。
    絶滅に瀕した植物が多いですね、これから気候変動がどんどん進むから心配です。
    2021年05月29日 12:55
  • なおさん

    さすがはつくばの植物園、見たことがないような植物がこれでもかと出て来るのですね。
     希少種の保護・増殖に力を入れている植物園というのは、スゴイですが、上手く咲かせて展示出来るというのは、栽培技術もスゴイのでしょうね。
    2021年05月29日 13:36
  • nobara

    コウトウなんとかというのは沖縄でよく聞きました。
    秋海棠にもあるんですね(*^-゚)⌒☆
    ヒジハリノキの花って、コクチナシに似ていませんか?
    ヤクシマスミレはニョイスミレのような?ですか?
    準絶滅危惧や絶滅危惧種なんですね。護ってあげたいですね。
    ハタケムシロはミジカクシの事ですね。キキョウ科のお顔ですね。
    ヤエヤマスズコウジュ、カワイイお花ですね~
    ニガクサのお花みたいに見えますね。
    2021年05月29日 14:05
  • river

    和名なのに舌を噛みそうな珍しい植物が並びましたね。
    絶滅危惧種は現地だけではそれこそ絶滅してしまうので植物園で厳重管理の上で栽培は不可欠ですね。しかしそれぞれが全く違う環境に育つものですから栽培は難しいでしょうね。
    2021年05月29日 15:45
  • eko

    初めて見る花ばかり、それも絶滅に瀕している植物ばかり、保存に力を入れているんですね。生育環境に合わせて育てるのも大変そうです。
    2021年05月29日 16:23
  • はるる

    植物園はいいところですね。
    こんなに珍しい花々が咲いて、見せていただく側もなるほどと思って拝見しています。
    こういうところでも早く咲いてしまうのがあるんですね。
    どの花も本当にきれいです。小さい花もおもしろそうです。
    2021年05月29日 19:47
  • 長さん

    寿々木さん、コメントありがとうございます。
    希少植物ですから、中々見る事は出来ませんね。
    東南植物楽園ではヒラドツツジ(ケラマツツジ、モチツツジ、キシツツジなどの交配種から選抜された品種)は見ましたが・・・。
    2021年05月29日 21:31
  • 長さん

    イッシーさん、コメントありがとうございます。
    多目的温室は広くないですが、展示植物の密度が濃いです。絶滅危惧種は皆さんに知っておいて欲しいので、説明を加えました。
    2021年05月29日 21:33
  • 長さん

    なおさん、コメントありがとうございます。
    この植物園は科学博物館の付属施設であるだけに、絶滅危惧種の調査、保存、育成には力を入れています。田の植物園の協力も得て個体数を増やし、自生地に戻す方向のようです。
    2021年05月29日 21:35
  • 長さん

    nobaraさん、コメントありがとうございます。
    コウトウというのは台湾の紅頭嶼という地名に因むようです。
    ヒジハリノキの花はコクチナシよりずっと小さいですが、花弁の間に雄しべが伸びるところなんかは似ていますね。
    ヤクシマスミレの唇弁はニョイスミレと比べると小さいようです。
    ハタケムシロの和名がミゾカクシですね。
    ヤエヤマスズコウジュ、シソ科の顔立ちですよね。昨年見たときは白花でしたが、本来はこのようなピンクの花です。
    2021年05月29日 21:47
  • 長さん

    riverさん、コメントありがとうございます。
    絶滅危惧種を研究して、保護、育成するのがこの植物園の使命の一つなのです。全国の植物園に協力を求めて株を増やし、将来は自生地に戻したいようです。
    2021年05月29日 21:51
  • 長さん

    ekoさん、コメントありがとうございます。
    この植物園は屋外と温室で絶滅危惧種を育てています。少しずつ株を増やして、他の植物園にも栽培記録と共に送って、育ててもらう計画と聞きました。
    2021年05月29日 21:53
  • 長さん

    はるるさん、コメントありがとうございます。
    この植物園の目的の一つは絶滅が危惧される植物を研究して、保護、育成をすることです。そうした植物を身近に見られるのはありがたいことです。
    2021年05月29日 21:55
  • 月奏曲

    イオウノボタン、硫黄臭いのかと思ったら硫黄島のほうでしたwそういえば離島の花だったw

    同じくオオシマガンピも伊豆大島じゃないですよねぇww
    2021年05月29日 21:56
  • 長さん

    月奏曲さん、コメントありがとうございます。
    硫黄の臭いがする花が会あったら面白いけれど。誰も見に行かないか(笑)。
    オオシマガンピは奄美大島ですよ。
    2021年05月29日 22:20
  • うふふ

    珍しいお花、初めて見るものばかりです。
    絶滅危惧種が並ぶと切なくなりますね。
    環境悪化やダムの建設、乱獲など人間が原因なのはなんとかならないものでしょうか。
    環境省に頑張ってもらいたいです。
    2021年05月29日 22:47
  • 長さん

    うふふさん、コメントありがとうございます。
    絶滅危惧植物になった原因は色々あるでしょうが、人間の行為が原因になったものも多いでしょうね。各地で保護活動が行われていますが、中には盗掘をする輩もいて本当に困ったことです。
    2021年05月29日 23:04
  • ロシアンブルー

    絶滅危惧種が多いですね。
    イオウノボタンの雄蕊が面白いですね。
    ヒジハリノキもなるほど直角に曲がっていて名前がおもしろいです。
    2021年05月29日 23:05
  • すーちん

    おはようございます
    ヒジハリノ木や
    マルバハタケムシロ
    面白い名の付け方ですね^^
    2021年05月30日 07:52
  • 長さん

    ロシアンブルーさん、コメントありがとうございます。
    イオウノボタンの雄蘂はシコンノボタンのそれを折りたたんだような形で、面白いです。
    ヒジハリノキという名前には思わず笑ってしまいましたよ。
    2021年05月30日 09:16
  • 長さん

    すーちんさん、コメントありがとうございます。
    ヒジハリノキの木肘を張った張ったように折れ曲がっているからですが、ハタケムシロはほふく性なので、畑に筵を敷いたように見えるからと言うのが名の由来です。
    2021年05月30日 09:19
  • 草凪みかん

    気候変動で少なくなっていく種もあれば、人間の開発行為で絶滅に瀕している種もある…。
    本州ではなく南西諸島でそういう事態が起こっているというのはちょっと驚きです。しかも、園芸目的の乱獲って…。(・・;)
    商業主義が絡むのは困りますね。
    2021年05月30日 10:23
  • 長さん

    草凪みかんさん、コメントありがとうございます。
    絶滅が危惧されるに至った理由は様々でしょうが、人間との関わりに大きく影響されていることは確かです。
    植物に限らず、希少と言われると価値が上がる傾向がありますね。それ目当ての盗掘は許せませんよね。
    2021年05月30日 12:01

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