今回はその紹介2回目で、リパリスの仲間とパフィオペディルムの仲間を取り上げました。
リパリス・ジャバニカはクモキリソウやジガバチソウの親戚ですが、インドネシア・ジャワ島の固有種で、山地の涼しい森の中に生えます。この株は当園で実った種子が飛んで、温室内で自然に出た実生が育ったものです。全てのランは限られた種類の菌と共生しないと種子が発芽・生長できないので、自生地から遠く離れた温室でランの実生が出ることは滅多にありません。近くに展示しているハベナリア・クルキアタ類似種も、いつの間にか実生が育っている数少ない種です(前記事参照)。これらのランが、温室内にどこにでもいる菌の種類と共生できる性質を持ってるからだと考えられます(つくば植物園の説明文より)。
チケイラン(竹蕙蘭)
Liparis bootanensis 日本(九州以南)~東南アジアに分布

リパリス・ラティフォリア
Liparis latifolia 中国南部~東南アジアに分布 花径は2cmくらい

リパリス・ロンベア
Liparis rhombea マレー半島、カリマンタン島、ジャワ島に分布
白色の花弁に赤い模様が入る 花径は1cmくらい

リパリス・グロッサ
Liparis grossa 台湾、フィリピンに分布 花径は1cmくらい

リパリス・ディスタンス
Liparis distans 中国南部~インド東部、フィリピン等に分布 花径約1.5cm

続いて、アジアに自生するパフィオペディルムの仲間です。この属名は唇弁の形から名づけられ、「女神のスリッパ(サンダル)」を意味します。袋状になっていますが、食虫植物ではありません。
パフィオペディルム・トンスム
Paphiopedilum tonsum スマトラ島やカリマンタン島に分布
トンスムとは「無毛の」という意味です

パフィオペディルム・リーミアヌム
Paphiopedilum liemianum スマトラ島北部に分布
このランは水平に伸びた側萼片に毛が生えています

パフィオペディルム・ニウェウム
Paphiopedilum niveum(ニベウムとも表記) マレー半島に分布
真っ白な花に細かな紫の斑点が入っていて、人気の原種です

パフィオペディルム・グラウコフィルム
Paphiopedilum glaucophyllum シャワ島に分布 リーミアヌムに似ている

パフィオペディルム・バルビゲルム
Paphiopedilum barbigerum 中国南部とベトナムに分布
中国ではパフィオペディルムのことを「兜蘭」と表記します

パフィオペディルム・スピケリアヌム
Paphiopedilum spicerianum ミャンマー西部~インド北東部に分布
唇弁の上部には淡い紫色の仮雄ずいがあります

以下は、日本にも自生するランです。
トサカメオトラン(鶏冠夫婦蘭)
Geodorum densiflorum 日本(沖縄)~東南アジア、オーストラリアに分布
西表島では比較的多いランだといわれる

ヘツカラン(辺塚蘭)
Cymbidium dayanum 日本(九州南部)、東~東南アジアに分布
日本産の学名はCymbidium dayanum var. austro-japonicumで変種扱い

オオナギラン(大梛蘭)
Cymbidium iancifolium 日本(徳之島以南)~熱帯アジア
シュンランの仲間 環境省は同じ学名のナギランを絶滅危惧II類(VU)に指定

(つづく)
この記事へのコメント
信徳
良く似ていますね。
株で増えるしか方法は無いと思っていますが実生で育ったと聞いて驚いています。
寿々木
パフィオ綺麗ですね。これならヴィーナスが履いても似合うでしょう。
nobara
あれもランの仲間でしたっけ?
実生で育つランもあるのですね。
しかも、いつの間にか育ってるなんて、なんて奇特な。
パフィオペディルムってスリッパ?みたいですね~
カゴッマの友人の旦那さんが育てておられましたが
急逝なさって、その後、どうなったか?聞けずにいます。
個人的にはヘツカランみたいなのが好きです((((^Q^)/
シュンランの仲間なんですね。
river
現在ランの増殖は無菌培養のフラスコ苗と成長点培養のメリクロン苗です。メリクロン苗は親と同じ性質を持った苗が大量に出来ます。新種を作るには今でも無菌培養です。
パフィオペディルムは日本のクマガイソウやアツモリソウの仲間です。不思議な形の唇弁が見どころですね。
イッシー
パフィオペディルムは個性派ぞろいです!
ランはみんな個性派かな。。。
はるる
それなのにきれいな姿をしています。
女神のスリッパですか。サンダルには見えませんね。
独特な姿です。
日本でも自生しているんですか。すごいですね。
なおさん
国営武蔵丘陵森林公園の雑木林で、クモキリソウは見たことがあります。
日本のスズムシソウもいろいろ面白いものですよね。
ヴィーナスのスリッパというパフィオもいろいろ面白いものが多いですよねえ。
長さん
リパリス・ジャバニカ、クモキリソウに似ているので、学名をリパリス・ジャパニカと間違えて読んでしまいましたよ。
原種が実生で育ったというのは極めて珍しい例でしょうね。
長さん
ランが育つためにはラン菌の存在が必要とのことです。ある程度育てばラン菌に頼らなくても良いらしいのですが、実生の場合はラン菌が重要が役割をになるとことこです。発芽抑制物質とは丸で逆の役割ですね。
長さん
リパリス属は日本語ではクモキリソウ属と呼ばれているので、クモキリソウやミズトンボの仲間というのは納得です。
自然界では実生で育つのが普通ですが、ラン菌がないと育たないと言われています。特定のラン菌ですが、たまたまそれに似たラン菌が植物園の温室内に存在していたのでしょう。
お友達のご主人がパフィオを育てておられましたか。我が家でも挑戦したことがありますが、1年で駄目になりました。
日本ではヘツカランをシュンラン属としていますね。していますね。
eko
女神のスリッパといわれるパフィオペディルムも色々な花色があって素敵です。
日本にも様々な自生ランが見られるんですね。
長さん
ウチョウランは段ボールに入れた鹿沼土だと発芽しますか。鹿沼土にラン菌が住んでいるんですかねー。
つくば植物園では増殖には無菌培養を採用しています。多目的温室の奥にある研修展示館の3階でその様子をガラス窓越しに見学することができます。
グマガイソウやアツモリソウはアツモリソウ属に分類されています。学名はCypripediumです。
長さん
リパリス属やパフィオペディラム属のほんの一部を取り上げましたが、同じ属の中でも個性派は多いですよ。
長さん
ランは先に発達した植物が繁殖できないような所でしか進化できませんでした。今でも、亜熱帯の熱帯雨林の中などで、人知れず咲いているランがあるはずです。
ギリシャ語が出来た頃、スリッパというものはなかったので、サンダルを括弧書きしているそうです。日本にもクマガイソウやアツモリソウのように唇弁が袋状になったランがありますよ。
うふふ
原種だけでも一体どれぐらいあるのでしょうか。
1㎝ほどの小さな花をたくさんつけたリパリス・ロンベア、可愛らしいです。
日本に自生するランも頑張っていますね。
長さん
アリサンスズムシは見たことがないので、ネットの図鑑を見たら、確かにリパリス・ジャバニカに良く似ていますね。
武蔵丘陵森林公園のクモキリソウは自生ですか。蓼科の御泉水自然園で一度だけ見たことがあります。
パフィオペディラムの原種も種類が多いですね。
長さん
ランの発芽には特定のラン菌の存在が必要なのですが、たまたまつくば植物園の温室に、似た性質のラン菌がいたと言うことなんでしょうね。
日本に自生しているランは和蘭などとしていますが、洋ランの仲間も色々自生しています。
長さん
ランは種類が膨大ですよ。原種だけで2万~2.5万と言われています。それに交配種や人工属が加わるわけですから、数万になるでしょうね。
ランの中には虫眼鏡を持っていかないと見えないような小さな花を咲かせるものもありますよ。
月奏曲
パフィオペディルムこちらはなんというか蘭ぽい蘭w
ニウェウムはやっぱり人気なんですね、かわいいw
結構バルビゲルムも好きです
すーちん
高尾山の高木の天辺に
飛んできた種から育った
蘭があります
無門
温室内で自然に増えるなんて
ランの逞しさがわかりますね
日本も温暖化でもしかしたら
長さん
リパリスは花を昆虫に擬態させるという進化を選んだのかも知れませんね。
パフィオペディラムは割合ポピュラーになりましたから、目にする機会も多いでしょう。
長さん
高尾山で高木の天辺からランが芽生えていましたか。セッコクなら可能性大ですね。
長さん
ランを多く育てている植物園の温室だからこそでしょう。在来種なら兎も角、普通ではあり得ないです。
ロシアンブルー
リパリス・ジャパニカ、ジャワの固有種が温室の条件が整ったんでしょうね。
実生で発芽するって凄いですね、貴重なランですね。
パフィオペディルム類も面白いです。
長さん
リパリス・ジャパニカの発芽に必要なラン菌と同じような性質のラン菌があったのでしょうね。珍しいことです。
パフィオペディラムの袋は中に落ちた昆虫がもがいて出ようとするときに花粉が付くのです。