先回、特別展示「至宝の蘭」を紹介しましたが、もう一つの特別展示「奇跡のカトレア」の展示物を紹介します。その目玉は「世界初のカトレア交配種 カトレア・ドミニアーナ」でした。
カトレア・ドミニアーナは、イギリスの園芸業者「ヴィーチ商会」のジョン・ドミニーが、ブラジル原産の原種「インターメディア」とエクアドル原産の「マキシマ」を交配し、1859年に開花させました。これが世界で初めてのカトレア交配種の誕生です。
なお、ドミニーはその3年前に、えびねを使った、ラン科で初めての人工交配に成功しています。
カトレア・ドミニアーナ
Cattleya Dominiana


カトレア・ドミニアーナの交配親
左下、カトレア・インターメディア(C.internedia、1928年ブラジル)
右下、カトレア・マキシマ(C.maxima、1833年エクアドル)


その他のカトレア展示から ( )内は発見年と国
左下、カトレア・パーシバリアナ(C.perchibaliana、1883年ベネズエラ)
右下、カトレア・ローレンセアナ(C.lawrenceana、1885年ベネズエラ)


左下、カトレア・トリアネ(C.trianae、1860年コロンビア)
右下、カトレア・ルデマニアナ(C.lueddemanniana、1854年ベネズエラ)


左下、カトレア・ワルケリアナ(C.walkeriana、1843年ブラジル)
右下、カトレア・シュロデレー(C.schriederae、1888年コロンビア)


カトレア・ロディゲシイ ‘ヨランダ ナカゾネ’
C.loddigesii 'Yoranda Nakazone' SM/JGP,SM/JOGA)
< 第1回世界らん展日本大賞受賞花 >

以下は個別部門の優秀作品(トロフィー賞を獲得したもの)
パフィオペディラム ノリト ハセガワ ‘セクシー’
Paph. Norito Hasegawa 'Sexy'
中藤保孝(東京都・中藤洋蘭園)

ファレノプシス交配種 ‘パープル エレガント 142#’
Phal. ('Jincheng Lover x Fuller's Purple Queen) 'Purple Elegant 142#
高垣欽司(奈良県・(有)サンオーキッド)

カトリアンセ マジック ベル ‘ニュー トリック’
Ctt. Magic Bell 'New Trick'
小佐野滋子(神奈川県)

ブラッシア チャック ハンソン ‘ナカトー’
Brs. Chuck Hanson 'Nakato'
中藤保孝(東京都・中藤洋蘭園)

デンドロビューム モニリフォルメ(長生蘭)‘牡丹錦’
Den. moniliforme 'Botannishiki'
石井昭彦(東京都・石井)

バンダ ファルカータ(富貴蘭)‘王朝’
V. falcata 'Ocho'
宇田川滋光(東京都)

パフィオペディラム ミレニアム ドリーム ‘ダテグランド’
Paph. Millennium Dream 'Date Grand'
泉 信夫(宮城県)

エピデンドラム パシフィック アイランダー ‘ユカコ’
Epi. Pacific Islander 'Yukako'
鈴木隆夫(東京都)

ファレノプシス交配種 ‘コユキ’
Phal. (Kung's Amar Dott x Sheena's Bright Ruby) 'Koyuki'
椎名正剛(千葉県・椎名洋ラン園)

カランセ(海老根)交配種 ‘風の輿(カゼノミコシ)’
Cal. [{Ozu x (Satsuma x Oowada)} x {Higo x Oowada)}] 'Kazenomikoshi'
河野寿和(鹿児島県・寿峰苑)

次回は、トロフィー賞受賞作品の紹介を中断して、フレグランス部門の上位作品を紹介します。
この記事へのコメント
nobara
世界初のカトレア交配種「カトレア・ドミニアーナ」
蘭の事は全く分かりませんが、凄い事なんですね\(◎o◎)/
カトレアはやはり蘭の頂点に輝くお花ですよね
カランセ交配種 "風の輿”ずいぶん変わった色目ですね。
カゴッマ出生でしたか?
river
RHS(英国王立園芸協会)の「サンダーズ・リスト」に過去に行われた交配の実績のすべてが掲載されています。その最初の交配種が「カトレア・ドミニアーナ」ですね。
はるる
今まで数多くの花を見せていただきましたが、
毎回、そのすばらしさに驚かされます。
どの花がとは言えないくらい、すべて美しいですね。
eko
他のランたちも個性的で美しいですね。見ているだけで楽しいです。
信徳
ドミニアーナなんですね。
苦労に苦労を重ね交配出来た喜びは言葉には
言い尽くせないものが有るのでしょう。
我々も種を蒔いて花が咲いた時に喜びを感じます。
小さな喜びを!
ロシアンブルー
また今年も世界らん展では珍しいらんを見せて頂きました。
「奇跡のカトレア」親も展示されているのですね。
シックな色で落ち着きありますね。
「風の輿」も印象深いです。
長さん
ランの花粉は非常に小さいので、当時の技術では交配させることすら難しかったのです。カトレア・ドミニアーナの誕生以降、多くのカトレア交配種が作り出され、蘭の女王と呼ばれるほどになったのですね。
カランセ(海老根)交配種は5種類もの交配によって作られましたが、紫が濃いですね。
長さん
世界らん展日本大賞2016で、「ランの家系図を見てみよう」という特別展示があり、その家系図を作った人として、フレデリック・サンダーが紹介されていました。そして、カトレアの家系図とともに、このドミニアーナも展示されていました。
mori-sanpo
今年は、行けそうにありませんので、長さんのご紹介されたものを楽しみに見させていただきます。
長さん
毎回特別展示があるようです。昨年は食虫植物と光るシクラメンでした。
入場料は高いですが、素晴らしいランが並んでいるので、やはり見る価値がある展覧会です。
長さん
ドミニアーナは紫色のリップが良いですね。両親の良いとこ取りの感じがします。他にも、カトレアの原種が展示してあったのですが、今回は割愛しました。
長さん
ジョン・ドミニーはカトレアの方を先に交配させる研究を始めたのですが、後から交配を手がけた海老根の方が先に花を咲かせたのだそうです。
私たちが手がける草花の種は大きいですが、ランの場合は0.5~0.8mmくらいしかないそうです。
長さん
ジョン・ドミニーが交配に成功した後、ランの家系図が作られましたから、人工交配の場合は、親が全て判明しています。
風の輿は5種類の海老根を交配に使っています。
長さん
世界らん展日本大賞は年ごとにレベルが上がってきていますが、残念なことに観覧者数は下降気味なんです。昨年は10年前の4分の1くらいですから。今年は新型コロナウイルスの関係で10万人を割るのではないかと・・・。
うふふ
1859年に世界初のカトレア交配種の誕生とは驚きました。
まさに「奇跡」ですね。
蘭の歴史を知るのも面白いですね。
月奏曲
たぶん値段見てたまげることは間違いないんだけどw
長さん
世界初のカトレア交配種は160年も前に可能になったのですね。この時からランの種類の管理と、家系図作りが始まっており、ランの女王に相応しい歴史ですよね。
長さん
野生のランは品種ごとに特定の媒介者(昆虫)が決まっています。それを人工で田の品種と交配させようというのですから大変だったのですよ。当時はハイブリッドなどという技術はありませんでしたからね。
なおさん
トロフィーをもらうような株は、さすがの美しさですね。
エビネの交配、無菌播種は僕も自宅でやって見たことがありますが、無菌室ではないのでうまくいきませんでした。
秋月夕香
カトリアンセ マジック ベル ‘ニュー トリック’や、
ブラッシア チャック ハンソン ‘ナカトー’や、
エピデンドラム パシフィック アイランダー ‘ユカコ’などです。
でもどれもきっと園芸家さんたちの努力の結晶でしょうね。
すーちん
長生蘭、富貴蘭も
とりこにする魅力ある
蘭ですね
イッシー
ボーッと見てると長さんに叱られる・・・
ただ漫然と写真撮ってました(苦笑)
カトレアがいっぱいでガードマン?立ってたところかな。
誰も並んでなかったからさ~っと。。。
長さん
ジョン・ドミニーが交配して作った株の子孫が残っていたら、それこそ奇跡のカトレアでしょうが、展示は近年に交配された物でしょうね。
海老根も種から育てるのは難しいのですね。つくば植物園で、フラスコ内でランを育てているのは見たことがあります。
長さん
ランは交配で作られたものを含めると数万種類といわれています。現在も、人工交配で、新しい属が続々と誕生しています。
ラン好きで、良くラン展を見に行く私でさえ、行く度に初めて見るランに出会います。
長さん
長生蘭や富貴蘭などの東洋ランにも根強いファンがおられます。花は地味ですが、葉芸や器にも鑑賞価値がありますからね。
長さん
今回紹介した特別展示は、日本大賞から見ると、右奥、女性大使のテーブルディスプレーの裏側に位置しています。「カトレアがいっぱいでガードマンがたっている」その通りです。今年は、入場者が少ないせいか15時過ぎには列が無くなりました。
トトパパ
いろんなランの花があるんですね。
どれも綺麗ですね。
長さん
ランは植物の中で一番品種が多い植物です。
心
ランの女王と言われているカトレア。
世界初のカトレア交配種『カトレア・ドミニアーナ』
カトレア・ドミニアーナの交配親も、美しいですね。
これほどのカトレアの花が並んで、圧巻です。
それぞれの美しさがありますね。
貴重なカトレアを拝見いたしました。
長さん
ジョン・ドミニーは、一番美しいカトレアの原種同士を交配したらもっと美しいランが出来るのではないか、と考えたのかも知れませんね。この成功で、美しいカトレアが次々に誕生し、原種のカトレアと共に蘭の女王と言われるようになったのでしょうね。
ろこ
世界初のカトレア交配種「カトレア・ドミニアーナ」
素敵な花色ですね。
こうして見せて頂いてカトレアはランの女王。。。
認識させられました。
長さん
カトレア・ドミニアーナの誕生が、ラン交配の原点といっても良く、その後の交配研究と相まって、カトレアがランの女王と呼ばれるに至ったのですね。