ランの栽培室に続いて、熱帯花木やネペンテス(ウツボカズラ属)、ベゴニアなどが並ぶ栽培室です。
下の写真では分かりませんが、仏教三大聖樹と言われるサラソウジュやムユウジュ、インドボダイジュが育てられていました。
昨年5月、国内では2例目となるムユウジュの花が咲いたそうです(最初は、滋賀県草津市立水生植物公園みずの森)。職員は、今年も咲かせたいものだと言っておられました。
熱帯花木の中で唯一、ロウソクノキ(蝋燭の木)に花が2輪咲いていました。ノウゼンカズラ科ロウソクノキ属の常緑低木で、パナマが原産です。
ベゴニアなどが並んだ栽培室です。
櫛型の温室の外に水槽があり、絶滅危惧種の水生植物が育てられています。面白のは、ここにアズマヒキガエル(日本固有種)が5月頃産卵に来ることです。母と子との森にも産卵に来るそうですが、どこからやってくるのでしょう?
様々な植物の栽培室が続きます。
日本国内の絶滅危惧植物が並んでいます。
絶滅危惧植物の域外生育は、日本植物園協会に加盟する植物園が連携して取り組んでいるそうです。現地の株を採取するわけにはいかないので、実が出来る頃に種を集めてきます。何年も通わないと種が取れないものもあるそうです。その種をいくつかの植物園に配布して、育てるわけですが、その生育過程はデータベースに貯えられます。成功例だけではなく、失敗例も集められるそうです。
櫛形の栽培室の見学を終え、別棟の冷温室に入りました。ここには「福羽苺」が保存・育成されています。また、埼玉県の2ヵ所に10株しかないイワウラジロも保存されていました。
明治31年(1898)、福羽逸人がフランスの「ゼネラル・シャンジー」というイチゴ品種から国産イチゴ第一号となる「福羽苺」を作出しました。当時の新宿御苑は皇室の御料地だったことから「御料イチゴ」とも呼ばれ、門外不出とされました。その後、全国に広まってゆき、現在栽培されているイチゴのルーツとなりました。
最後の栽培室では常温保存の絶滅危惧種などが育成されていました。右下は、自生地の崖に3株しか確認されていないハヤトミツバツツジです。
左下は種子保管庫です。マイナス20℃で保存されています。一部のランの種子は沖縄海洋博公園(熱帯ドリームセンター?)の種子保管庫に送られ、窒素ガスによりマイナス96℃で保管されているそうです。 右下は、これまで見てきた栽培室(櫛型の温室)です。
左下は、滅多なことでは見ることができない旧洋館御休所の裏側です。
最後は、アンケートに協力し、旧洋館御休所(国の重文)前で解散となりました。職員の皆さん、ありがとうございました。
バックヤードツアー終了後に撮った新宿御苑の巨樹、2種類です。
ハルニレ (春楡)
ニレ科の落葉高木。別名:ニレ。通称:エルム
幹周り:383cm、樹高:22m、樹齢:120年以上(推定)
関東では珍しい北国の木
ユリノキ (百合の木)
モクレン科ユリノキ属の落葉高木。 別名:ハンテンボク(半纏木)、レンゲボク(蓮華木)
幹周り:491cm、樹高:35m、樹齢:120年以上(推定)
新宿御苑のシンボルツリー。 根元のベンチに女性が座っています
1月24日撮影。
この記事へのコメント
目黒のおじいちゃん
貴重なレポ、一端でも共有できますのは嬉しい思いです。
river
絶滅危惧植物の保存管理も行われていますね。現地保存が良いのでしょうが望むべくもありません。
先日、庭木剪定をした木がハルニレ、通称エルムでした。
ユリノキと言うと国立博物館前の樹齢140年の大樹を思い出します。
信徳
バックヤードの報告を見させて頂き初めて知りました。
ユリノキも120年以上の木が有るんですね。花などとても見れません。
nobara
そのイチゴもフランス?が母種?なんですか?
今では日本の苺が逆に向こうで人気なんですよね。
日本の苺はほんとにびっくり@@します。どれもこれも美味!
ハヤトミツバツツジってあの隼人ですか?カゴッマの。
霧島連山の辺りはいろんなツツジがありそうです。
このユリノキ、温室を望む場所?のですね。
私も東国博の大木を思い浮かべました。
あそこはゆるキャラにもなっていますもんね~♪
こうやってバックヤードの模様をアップして下さるだけで
そこで頑張ってる方たちは本望でしょうね(^o^)丿
無門
とても貴重は観察会でしたね
成功例だけでなく
失敗例もデータベース化
どんな仕事でも
失敗事例は貴重な財産ですね
長さん
貴重な体験ができました。温室担当者に質問を投げかけた事項もあるので、機会があったらまた参加したいと思います。
長さん
仏教三大聖樹のうち、ムユウジュの花は神代植物公園と茨城県フラワーパークで見たことがあります。他の2種についても、見てみたいものです。
ユリノキは明治9年頃、日本で最初に30粒の種子が新宿御苑に植えられました。その木から採れた種子を育てて、日本全国に広まりました。国立博物館のユリノキは、新宿御苑にもたらされた種子のひとつから育てたもので、明治14年に植えられたものだそうです。ですから、両方とも樹齢140年以上になるわけですね。
月奏曲
趣旨の保管も興味深いですね。いずれは種子育てるんですかねぇ?他の園とかにも配るのかな?
長さん
絶滅危惧種を現地から採集してくれば良いではないかと思いますが、それはたくさんある場合です。本当に少ないものは、種子から採取するしか方法がないのですね。
このユリノキは推定120年ですが、新宿御苑内には日本で初めて種子から育った140年ものがあります。
eko
イチゴは御苑がルーツなんですね。初めて知りました。
ハルニレ、ユリノキが樹齢120年とは凄すぎます。大きくて立派なものですね。
長さん
日本のイチゴのルーツは新宿御苑からで、そのもとはフランスからもたらされた2種類のイチゴだそうです。イチゴの他に、オリーブ、ブドウ、メロン、シクラメンなどがここから広まったのだそうです。
ハヤトイチゴは鹿児島です。絶滅危惧種とは知らずに、山から取ってきて植えているお宅もたくさんあるそうですが、純粋ではない可能性もあり、自生株から咲いた花からできた種を採取するのだそうです。
ユリノキの場所はその通りです。合わせて、riverさんへのコメもご参照下さい。
長さん
絶滅危惧植物を育てるにあたり、成功例より、失敗例から学ぶことの方が重要かも知れませんね。
長さん
その通りですね。絶滅危惧種の種を数カ所の植物園に配布して、それぞれ、一斉に種まきするわけです。上手くいって当たり前ですが、失敗を繰り返さないことが重要ですね。
この植物園に限らず、種が取れなかったり、枯れたりと言った、万一と言うことがあるから、種子で保存することも必要なんでしょう。
長さん
夜は無人になるそうですが、日曜祝祭時だって管理が必要ですよね。温室担当者の休みはどうなっているのかなんてことも心配しちゃいました。
ハルニレは北海道に行けば推定樹齢600年なんて長寿の木があると思いますが、ユリノキは新宿御苑のものが日本で最長寿です。
yoppy702
こんなのって、目にする機会が無いので、新鮮で、かなりの驚きです。
ありがとうございました。
温室の方は、綺麗に展示されてるので、ボクなんて、見て楽しむ程度ですが、バックヤードの方は、見て楽しんで勉強になりました。
新宿御苑、イイですね。
又、行ってみたいです。(^^)
うふふ
本当に素晴らしいです。
いくつかの植物園と連携して、成功と失敗も記録しておくなどのデーターもとってあるとは立派ですね。
日本固有のアズマヒキガエルまでいるのですか。
母と子の森の沼におたまじゃくしがいるかと思うとうれしくなりますね。
長さん
私も初めて知る機会なので、興味津々で取材しました。カメラは勿論、説明も聞き漏らすまいとデジタルレコーダーを持ち込みましたが、録音の方はイマイチで聞き取れない部分もありました。
こういう裏方の仕事や、その重要性を知ると、植物園での楽しみ方も違ってくるでしょうね。
長さん
日本植物園協会に加盟している基幹植物園で、絶滅危惧種の育成のため、リスクを分散しているという実態も知ることができました。何事もデータの積み重ねは重要ですね。
アズマヒキガエル、どこに住んでいるのでしょうね。母と子の森には雑木林がありますが、バックヤードの周りで生息していそうなところが無いらしいのです。
イッシー
ムユージュの花って他でも見た気がするんですが。
長さん
ある意味、ここは研究所でもあるでしょうね。
ムユウジュの花、2017年3月、イッシーさんがいつもの植物園(神代植物公園?)で見たという記事がありましたよ。私も神代植物公園などで見たことがありますが、大阪の咲くやこの花館でも咲いたそうな。
ジュン
ご苦労なさってるのです
ロウソクノキ
はじめてで驚きました
長さん
日本固有種も環境の変化によって絶滅危惧種が次第に増えています。そのような種の保存も植物園の仕事なのですね。
ロウソクノキ、実がなっていると名の由来が分かったのですが・・・。
なおさん
絶滅が危惧されているものを守り、繁殖させるのも大変なことですよね。
長さん
大温室が狭くなったとか、北東側のバックヤードはガラスが曇って見えないとか言う意見が参加者からも出ていました。私からはレストランユリノキの展示室の活用を提案しておきました。温室担当者も改善には気を遣っているようでした。
絶滅危惧種の種を集めるだけでも大変らしいです。昨年は3年通ってやっと採取できたと話しておられました。