今回は、多目的温室に展示された、筑波実験植物園 野生蘭コレクション展示の中から紹介しようと思います。
つくば植物園では研究と保全のため約3,000種のランを育てており、世界有数のラン科研究施設として知られています。つくば蘭展では、その中から、今の時期に花が咲いているものを選んで、約200点が展示されました。
今回の展示の目玉は、ニューギニアの巨大なランです。滅多に開花しないため、日本では初公開と思われるとのことです。
ニューギニア島低地の木や岩の上で、直射光を浴びる灼熱の環境で育ちます。現地では葉の長さが1.5m、花序の長さが5~7mにもなるそうです。
ショクダイオオコンニャクを発見したイタリアの探検家・ベッカリが発見したため、氏にちなんで名前がつけられています。
古今東西の研究者で最も多くのランの新種を発表したルドルフ・シュレヒテルをして「これまでに出会った最も奇妙なラン」と言わしめた種です。 (説明板より)
続いて、野生蘭コレクションから「今年のおすすめ」品種の紹介です。囲みは、つくば植物園の説明文です。
花弁の1枚が袋になっていますが、昆虫を食べるわけではありません。袋の中に滑って落ちた昆虫が這い上がるときに、花粉を背中に付けて受粉させる巧妙なワナになっています。
この種は本来うすい黄褐色の花ですが、黄色い花を咲かせる突然変異株が1888年に発見され‘サンデラエ’と名付けられました。
この株はかつて新宿御苑から来たものです。1914年の同苑の栽培植物目録に掲載されていますので、100歳を超えたご長寿様です。
その他のパフィオペディルムから。
左下、パフィオペディルム・バルビゲルム(Paph. barbigerum) 中国
右下、パフィオペディルム・グラトリクシアヌム・ダオエンセ
(Paph. gratrixiianum var. daoense) 中国、ラオス、ベトナム
左下、パフィオペディルム・バルビゲルム・ロキアヌム(Paph. barbigerum var. lockianum)
右下、パフィオペディルム・コクネシウム(Paph. coccineum) ベトナム
左下、パフィオペディルム・チャムベリアナム(Paph. chamberlainianum) スマトラ島
右下、パフィオペディルム・ジャワニクム(Paph. javanicum)
シャワ島、バリ島、スマトラ島
(今年のおすすめ その2)
プテロスティルス属
プテロスティリス・オフィオグロッサ (Pterostylis ophioglossa)
オーストラリア、ニューカレドニア島
プテロスティリス・トヴェヤナ (Pterostylis toveyana)
オーストラリア
プテロスティルス属
プテロスティリス・オフィオグロッサ (Pterostylis ophioglossa)
オーストラリア、ニューカレドニア島
プテロスティリス・トヴェヤナ (Pterostylis toveyana)
オーストラリア
球根植物です。サトイモ科のカラスビシャクのような、ランとは思えない不思議な花です。花の中から舌をペロツと出しているのが花弁の1枚、唇弁です。ここから出る化学物質にだまされて、キノコパエのオスは唇弁をメスと勘違いして交尾します。その拍子に唇弁がうしろに倒れ、もがいて隙間から出ようとするオスの体に花粉がつきます。カラスビシャクの仲間もキノコバエなどをだまして受粉に利用するので、両者の「他人のそら似」はキノコバエをだますという同じ理由だったことが分かります。
日本に自生するヨウラクランと同じ属で、木の幹にぶら下がって暮らします。南太平洋のバヌアツで2007年に採集しました。イボのように見えるひとつひとつが花。径Immたらずの、ラン科としてはもっとも小さい花のひとつです。1本の花序に何輪ついているか数えてみてください。1000輪を超えるかも。
きれいどころが少なかったので・・・・
11月21日撮影。
(つづく)
この記事へのコメント
寿々木
長さん
冒頭のディモルフォルキス・ベッカリーは鉢に植えてあるのですが、根が鉢からはみ出して長く伸びています。岩などに着生するランなので、長く伸ばした根から空気中の水分を吸収するのでしょう。
パフィオは色々な模様が入った品種の方が多いようです。
river
無門
いつも感心する
植物のだましのテクニック
元々だますつもりではなく
偶然そうなって
味を占めたのでしょうね
信徳
こんな巨大なランは花芽、茎が伸びて一年で終わってしまうのは勿体ないですよね。
このランもそこを知っていて数年間花を咲かせるのでしょう。凄いですね!
eko
パフィオペディルムも種類が多いですね。子孫を残すための仕掛けが面白いです。
その他のランも不思議な花を咲かせています。オベロニア・ヘリオフィラの紐のような花の集合、どれだけあるのかとても数え切れません。
最後のディメランドラ・ステノペタラを見て何かホッとします。
長さん
15時から研究員によるガイドがあったのですが、その方がニューギニア島で採取され、20年に亘って育ててきて、昨年やっと開花したのだそうです。さぞご苦労があったのでしょうね。
長さん
植物の方ではだますつもりではなく、どうしたら自分に寄ってくる昆虫に効率よく花粉を運んでもらえるかと思って進化を遂げてきたのです。
長さん
こんなに長い花茎を毎年伸ばそうとしたらかなりの養分が必要になりますね。厳しい環境だからそこ、花茎を長持ちさせる性質を身につけたのでしょう。
なおさん
ニューギニアの巨大なランも興味深いものですし、プテロスティリス・オフィオグロッサも面白い形で、ランの多様さには驚かされますね。
nobara
お花は小さいのに株が凄いですね~
お花はそれでなくても保ちがいいのに?さらに??
プテロスティリス・トヴェヤナって、ウラシマソウみたいですね。
蘭はこうやって、見せてもらうに限りますね。
mori-sanpo
花序の長さが5~7mにもなるとは驚きです。
また、パフィオペディルム・インシグネ・サンデラエの株が100才を超えたご長寿様ででしたか。
長さん
ディモルフォルキス・ベッカリーの花茎が数年も枯れないなんて、これまでのランの知識を覆しました。
パフィオについて、研究員は食虫植物ではないと強調していましたが、見に来ている方は先刻承知という顔をなさっていました。
ディメランドラ・ステノペタラ、原種でこの美しさですからねー。
長さん
3,000種も保有していると、1名の研究員が受け持つ品種もかなりの数になるでしょうね。
花茎が数年も生き続けるランなんて、始めて知りましたよ。
プテロスティリスの仲間は、らん展では必ずと言って良いほど出展されます。
長さん
ディモルフォルキス・ベッカリーは花茎を分岐させながら、数年間も花を咲かせ続けると言うから驚きです。一つ一つの花保ちも良さそうです。
プテロスティリス属は紐状になった側花弁が1本ならウラシマソウそっくりですね。
長さん
ディモルフォルキス・ベッカリーの花序が7mにもなるというのは驚異的です。数年も枯れないで延び続けるのですね。
ランも上手に育てれば100年以上生き続けるのですね。地上に最後に出現しただけあって凄い生命力です。
うふふ
想像もつきませんが大変なお仕事ですね。
オベロニア・ヘリオフィラに驚きました。
1mmの花が1000輪を超えるとは…。
見ているだけでクラクラしそうです(笑)
ロシアンブルー
これはまた珍しいランばかりですね。
100歳以上の長寿ランは管理するのに代が変わりますよね。
何かの尻尾の様なちょっと見ただけではランとは思えませんね。
面白いランをみさせていただきました。
イッシー
ジャングルの中で出会ったら感動するだろうな!
ほんと面白い花が多いですよね!
月奏曲
ウニのお化けがヒトデ串刺しにして吊るしてるというかなんというかw
不思議で奇妙な感じですね(-_-;)
プテロスティリス・オフィオグロッサ 、こっちはこっちでカタツムリぽいしw
長さん
つくば植物園のランの保全・育成は世界レベルなんだそうですよ。
オベロニア・ヘリオフィラ、花の大きさは1mmですからルーペを使わないと見えません。会場には、直径5cm位のルーペを貸し出していました。
長さん
3,000種となると、かなり希少な品種も含まれると思います。育成方法が確立されているわけではないので、大変な仕事ですね。
100歳以上の株なんて、盆栽並みですね。
実は、ランはもっと奇妙な形のものもあるのですよ。
長さん
ランにとりつかれて、あちこちのジャングルの中を探し歩いているランハンターが実際にいるんですって。
長さん
ディモルフォルキス・ベッカリー、面白い形容ですね。
つくば洋蘭会の出展作品の中に、ウニの中身みたいな花が咲いていましたよ。いずれご披露しますけど・・・。
プテロスティリス、指で作る影絵のうさぎみたいでしょ。
すーちん
思いもつかない様な形をした
ランも有るんですね
奥地にはまだ発見されて無い珍しい
ランも存在するんでしょう
長さん
ランは綺麗なものだけとは限らず、これがランなの?と目を疑うようなものもあります。
まだ人知れず、人が入れないような奥地でひっそり生きのびているランがきっとありますよ。
はるる
今日、NHKで昼間ランのお話をしていました。台湾からもってくるとか。趣味の園芸で台湾で撮影してきたとか。
長さん
NHKでランの話をしていましたか。もしかして、コチョウランかな。
つくばらん展に行った際、マイクロ胡蝶蘭を買ってきました。これも台湾産かも。