つくば野生ランコレクションから(3) フィリピンの花の女王と呼ばれるバンダ、ナリヤランなど

つくば蘭展にて(3)
 12月10日から18日まで開催されている「つくば蘭展」の第2会場で見た、「筑波実験植物園の世界の野生ランコレクション」の中から紹介しています。
 写真の下に記載したコラムは、つくば植物園による「見どころや育て方」の紹介文です。

バンダ サンデリアナ
Vanda sanderiana
花色の変化が大きいそうだ
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中央が本来の花色らしい
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赤みが抜けた珍しい個体
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 フィリピン・ミンダナオ島の固有種です。森のフタバガキ科の木に着生していましたが、ラワン材として輸出するため、フタバガキの森が失われると共に、この植物も森から消えてしまいました。
 「フィリピンの花の女王」と呼ばれ、今ではフィリピンの国花として大切にされています。
 昭和3年、昭和天皇即位祝賀宴の御座所に8花茎の株を飾った記録があります。

バンダ セルレア
Vanda coerulea
(写真は少々後ピンです)
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 パンダ・サンデリアナ(注:1~3枚目の写真)と同じ属ですが、こちらは中国雲南省からミャンマー、ヒマラヤにかけての涼しい山地で、カシなどの枝にしがみついて生きています。乾季には温度が下がり、霜が降りる日もあるとのこと。
 バンダ・サンデリアナは昭和天皇即位の祝宴に飾られましたが、こちらは大正天皇即位の折に使われました。時の宮内大臣の求めに応じて、牧野富太郎が「ひすいらん」という雅な和名を与えています。


ナリヤラン (成屋蘭)
Arundina graminifolia
熱帯アジアに広く分布し、日本では石垣島及び西表島に自生
「成屋」は、西表島の内湾にある小島、内離島にあった
成屋集落(現在は廃村)に由来すると言われている
絶滅危惧IB類(EN)
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赤紫一色なのは珍しい?
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アルンディナ カエスピトサ
Arundina caespitosa
中国南部、ラオス、ベトナムの中央高地に分布
ナリヤランの仲間です
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 H1区(帯資源植物区・東)で咲いていた菊です。

オオシマノジギク (大島野路菊)
キク科キク属の多年草。屋久島・奄美諸島に分布。絶滅危惧Ⅱ類 (VU)
リュウノウギクの系統から分化したと考えられている
咲き残りで、綺麗な花がなかった
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シマカンギク (島寒菊)
キク科キク属の多年草
近畿以西の本州、四国、九州の日当りのよい草地に生える
別名:アブラギク(油菊)=花を油に漬けて薬用にしたから
島には生えないからと、牧野富太郎はアブラギクへの改名を主張した
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 12月12日撮影。
 (つづく)


この記事へのコメント

  • nobara

    ナリヤラン(成屋蘭)はリカステっぽい?と思いました。
    筑波の蘭の様子は朝の情報番組でやってたんですが、さらっと変わった?蘭とだけ・・・
    も少し掘り下げて貰いたかったです。
    オオシマノジギクもシマカンギクも
    なんでも咲かせているんですね~@@
    そういう環境を作っているのかしら?
    午後から年内最終練習♪(コーラス)でした。
    明けたらすぐにまた始まります。
    年の瀬の気分がだんだん遠のいています。
    2016年12月17日 16:44
  • イッシー

    野生種のランも個性的ですね。
    森の中で見たら感動するでしょうね。
    ミンダナオ島やミャンマーと聞くとどうしても
    日本軍の過酷な戦いを連想してしまいますが、
    気候温暖で住みやすいんでしょうね。
    2016年12月17日 17:38
  • 寿々木

    バンダ サンデリアナですか、面白い花色です。パット サンデリアというコマーシャルを想い出しました。
    2016年12月17日 17:43
  • river

    洋ランの代表的なものはパフィオペディルム、カトレア、デンドロビウム、シンビジウム、ファレノプシスがあげられますがバンダもそれに劣らぬ魅力がありますね。サンデリアナはバンダの代表種でセルレアの青も魅力的です。
    2016年12月17日 17:48
  • shuuter

    牧野植物園でシマカンギク見ましたよ。
    黄色の菊 南国情緒たっぷりの菊ですね。
    2016年12月17日 20:14
  • eko

    野生ランも美しくて良いですね。
    バンダも魅力があります。サンデリアナはどちらの花色も素敵です。セルレアの青も綺麗ですね。
    2016年12月17日 21:20
  • 長さん

    nobaraさん、コメントありがとうございます。
    リカステが大きな3枚のがく片が特徴ですが、ナリヤランはその1枚が小さく、代わりに唇弁が発達しているので、3枚に見えますね。
    月曜日の朝、NHKがさらりと紹介していましたね。
    ここには絶滅危惧植物を集めた区画、準絶滅危惧種を集めた区画があり、絶滅危惧植物温室もあります。
    2016年12月17日 21:24
  • 長さん

    イッシーさん、コメントありがとうございます。
    野生の美しいランを見たいならシンガポールやマレー半島が良いらしいです。
    ミンダナオ島もミャンマーも高温多湿ですから日本人にとっては住みにくいかも知れませんよ。
    2016年12月17日 21:29
  • 長さん

    寿々木さん、コメントありがとうございます。
    バンダというと青い網目模様が特徴と思いますが、こんなバンダも良いですね。あー、小林亜星が出ていたCMですね。「パッ!とさいでりあ」でしたね。
    2016年12月17日 21:34
  • 長さん

    riverさん、コメントありがとうございます。
    代表的な属は綺麗なものが多いですが、バンダ属もなかなかのものです。原種で美しいものに出合うと、嬉しくなっちゃいますよ。
    2016年12月17日 21:36
  • 長さん

    shuuterさん、コメントありがとうございます。
    牧野博士が、江戸時代から続くアブラギクという名称に改名すべきと主張したエピソードもあるので、牧野植物園ならシマカンギクは当然展示があるでしょうね。
    2016年12月17日 21:39
  • 長さん

    ekoさん、コメントありがとうございます。
    野生ランの中には、ハッとするほど美しいのがあります。今回紹介したランなどは、もうこれ以上、交配しなくても良いよと言いたいくらいです。
    2016年12月17日 21:42
  • 月奏曲

    サンデリアナのが賑やかで明るい感じですがヒスイランのほうがおちついた雅趣があって好きだなぁ…
    2016年12月17日 22:17
  • うふふ

    見事ですね。
    パンダの仲間は華やかですね。
    「フィリピンの花の女王」は気品があるように感じました。
    着生するランは、元の木と運命共同体なのですね。
    可哀想に~。
    2016年12月17日 22:51
  • 長さん

    月奏曲さん、コメントありがとうございます。
    サンデリアナは渋い色合いが基本で、緑色は突然異変らしいです。ヒスイランの方はそのものズバリの翡翠色で美しいですね。
    2016年12月18日 00:00
  • 長さん

    うふふさん、コメントありがとうございます。
    フィリピンの国花であるサンデリアナはバンダ属の中でも大きな花が咲く品種ですから、華やかです。
    着生ランはもはや地上には住処を見つけられなかった植物なのです。
    2016年12月18日 00:04
  • ロシアンブルー

    今晩は。
    フィリピンの花の女王はラワン材に着生しているんですか~
    国花にふさわしいすてきな花をつけますね。
    珍しいランばかりで楽しめます。
    2016年12月18日 00:19
  • なおさん

    バンダは丈が大きくなり、寒がるので温室がないと栽培が大変なようですね。花もいろいろなものがあり、珍しいものがありますね。セルレアの血の入ったフウラン系交配種を育てたことがありますが、やはり草丈が大きくなるようです。

     オオシマノジギクやシマカンギクがまだ咲いているのですね。17日に国営武蔵丘陵森林公園に行きましたら、アワコガネギクが咲き残っているのを見られました。
    2016年12月18日 06:48
  • すーちん

    お早うございます
    ノビノビと育ったっという
    感じの野生ラン魅力的ですね
    2016年12月18日 07:23
  • 長さん

    ロシアンブルーさん、コメントありがとうございます。
    フィリピンの国花がラワン材が取れる樹に着生しているとは知りませんでしたよ。
    らん展は行く度に珍しい花に出会えるので楽しいです。
    2016年12月18日 09:08
  • 長さん

    なおさん、コメントありがとうございます。
    バンダは着生ランの中でも大きくなる種類だと思います、こうしたランが咲く密林を探検してみたいものですが、無理でしょうね(笑)。
    セルレアもフウランも同属だから交配も容易なんですね。
    オオシマノジギクやシマカンギク、林の縁で風が防げるような場所でした。
    2016年12月18日 09:15
  • 長さん

    すーちんさん、コメントありがとうございます。
    野生ランを環境の異なる日本で育てるのは大変だと思いますが、綺麗に咲かせていました。
    2016年12月18日 09:17
  • 無門

    こんにちは

    ラワン材の多くは
    日本に輸出されたものですね
    絶滅の片棒を日本も担いだわけだ
    2016年12月18日 16:55
  • 長さん

    無門さん、コメントありがとうございます。
    ラワン材の輸入はもうかなり少なくなりましたが、それ以前はもしかすると、フィリピンからラワン材を一番輸入したのは日本かも知れませんね。
    2016年12月18日 18:25
  • K.たじまん

    やはり熱帯の野生の蘭は生命力にあふれて、色彩も独特のものがありますね!特に赤とかフィリピンの国花の花も気品を感じます。その下の紫の縞模様の蘭は熱帯を感じさせます。
    2016年12月18日 20:14
  • 長さん

    K・たじまんさん、コメントありがとうございます。
    熱帯のランでも、花色や形が不細工なものはありますが、ランに良いイメージを持ってもらいたいので、そういうのはあまり載せたくないのです。
    2016年12月18日 21:51

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