つくば野生ランコレクションから(2) プレプタンテ、リパリスなど

つくば蘭展にて(2)
 12月10日から18日まで開催されている「つくば蘭展」の第2会場で見た、「筑波実験植物園の世界の野生ランコレクション」の中から紹介しています。
 写真の下に記載したコラムは、つくば植物園による「見どころや育て方」の紹介文です。

プレプタンテ カルディオグロッサ
Preptanthe cardioglossa (← Calanthe cardioglossa)
インドシナ(タイ、ラオス、ベトナム)に分布する地性ラン
画像
画像
 ベトナムからタイに掛けての石灰岩の崖に生えます。これまでエビネ属(Calanthe)とされていましたが、当園での研究の結果、別属とすることが妥当だと分かり、2015年に発表しました。
 乾季には落葉し、それと共に花茎がぐんぐん伸びます。栄養を貯える茎をいかに大きく作るかが大事なので、新芽が動き出したら直ぐに肥料をやり始めます。キュッとくびれた茎もチャームポイントですが、とても折れやすいので注意が必要です。


リパリス ジャバニカ (リパリス・ジャワニカ)
Liparis javanica
ジャワ島の1150m~1500mの山地に分布する
画像
画像
 見た目の通り、クモキリソウやジガバチソウの親戚ですが、インドネシア・ジャワ島の固有種で、山地の涼しい森の中に生えます。この株は当園の温室で自然に出た実生が育ったものです。
 全てのランは、特定の種類の菌と共生しないと種子が発芽・生長できないので、自生地から遠く離れた温室でランの実生が出ることは滅多にありません。
画像
 リパリス ジャバニカの花は、色は異なりますが、日本のスズムシソウ(鈴虫草。写真右)にもよく似ています。






リパリス グロッサ
Liparis grossa
台湾、フィリピンに分布する着生ラン
これもクモキリソウの近縁種だが、花は昆虫のような形ではない
画像


スパトグロッティス ポルツスフィンシイ
コウトウシランの仲間で、ニューギニア島に分布する地生ラン
鮮やかなピンクの花です。花茎に蜜が溜まるそうです
画像


トリコグロッティス オルチダ
Trichoglottis orchidea
ベンガル湾南部のニコバル諸島で発見された(らしい)着生ラン
とても小さな花です
画像



 H4区(準絶滅危惧植物区)で見た ワカサハマギク (若狭浜菊) です。
画像
画像
キク科キク属の多年草。日本固有種。絶滅危惧Ⅱ類
福井県~鳥取県の日本海側海岸の岩場に分布
リュウノウギク(竜脳菊)の変種とされる

 12月12日撮影。
 (つづく)



この記事へのコメント

  • 寿々木

    ワカサハマギク、花裏は薄紫なんですね。リュウノウギクの変種の証に思えます
    2016年12月16日 17:04
  • 無門

    こんにちは

    暖かな国の
    しかも高地を
    ランは好むようですね
    2016年12月16日 17:16
  • river

    野生ランは着生ランと自生ランの2つに分類されます。両者は性質や形態が大きく異なりますので栽培方法が違います。どちらのランかを知るのが始まりですね。
    2016年12月16日 17:23
  • river

    ごめんなさい。自生ランではなく地生ランの間違えです。
    2016年12月16日 17:25
  • 長さん

    寿々木さん、コメントありがとうございます。
    ワカサハマギクの舌状花は咲き進むと薄紫に変色するようです。その点はリュウノウギクと同様だと思います。
    2016年12月16日 17:26
  • 長さん

    無門さん、コメントありがとうございます。
    ランは地上に現われた最も遅い花だそうで、他の花が咲けないような、条件の悪いところでしか進化できなかったのだとか。
    2016年12月16日 17:29
  • 長さん

    riverさん、コメントありがとうございます。
    地性ランか着生ランか、分る限り記載するようにしています。
    植物園では、着生ランでも鉢植えで展示されるものが多いように思います。栽培法に長けた人たちが育てているのでしょうね。
    2016年12月16日 17:34
  • イッシー

    個性的ですよねー!
    魅せられてしまうのがよくわかりますね。
    絶滅危惧種の菊に出会ってもたぶん私は気がつかない。。
    2016年12月16日 18:11
  • eko

    世界の野生ラン、ユニークな花が並んでいますね。もちろん初めての花ばかり見ているだけで楽しいですね。
    ワカサハマギクは絶滅危惧種なんですね。見ただけでは他のキクとの違いが分かりません。
    2016年12月16日 18:21
  • 長さん

    イッシーさん、コメントありがとうございます。
    次から次へと変ったランが登場するのがらん展の魅力なんです。これほど多様に発展した植物を他に知りません。
    キクは苦手ですが、植物園はきちんと名札があるので助かります。
    2016年12月16日 19:03
  • 長さん

    ekoさん、コメントありがとうございます。
    ここの野生ランコレクションは幅広いので、毎年見に行っていても初めて見るものがどんどん出てきます。それが楽しいのです。
    私もキクは見分けが出来なくて困ります。
    2016年12月16日 19:05
  • 信徳

    初めてのランばかりです。
    ランは生えて来るのではなく作られるのでしょう。
    凄い世界ですね。
    2016年12月16日 20:02
  • shuuter

    ワカサハマギク リュノウギクの変種ですか。
    美しい大きめの野菊ですね。
    2016年12月16日 20:09
  • 長さん

    信徳さん、コメントありがとうございます。
    ランは人工交配で出来たものも沢山ありますが、今回取り上げているのは全て野生、つまり、原種ランです。世界に700属以上、15000種以上あると言われています。
    2016年12月16日 21:08
  • nobara

    スパトグロッティス ポルツスフィンシイは
    石垣島でみたコウトウシランに似てると思いましたら、お仲間なんですね~((((^Q^)/
    リパリス ジャバニカ(リパリス・ジャワニカ)
    葉っぱが面白いです。つきぬきになっていますね。
    2016年12月16日 21:09
  • mori-sanpo

    リパリス ジャバニカ、大きな葉にくるまれた花穂も花も全て黄緑一色なのが魅力的ですね。
     ジャワ島の1500m近い山地で咲いている姿は良いでしょうね。
    2016年12月16日 21:10
  • 長さん

    shuuterさん、コメントありがとうございます。
    ワカサハマギクの染色体数はリュウノウギクの倍になるそうです。花の大きさはあまり変りませんが、葉が少し大きいようです。
    2016年12月16日 21:10
  • なおさん 

    いろいろ珍しいランがいろいろあり、目がランランと輝いてしまいますねえ。緑色のクモキリソウは武蔵丘陵森林公園でも生えているところがあるのですが、スズムシソウの自生はまだ見たことがないのです。リパリスの仲間は花が面白い形で楽しいですね。

     ワカサハマギクも清楚なキクで良い感じです。知らないとあの大輪のハマギクの仲間かと思いがちですが、リュウノウギクの変種とは面白いですよね。
    2016年12月16日 21:23
  • 月奏曲

    最初のプレプタンテ カルディオグロッサが華やかで可愛い感じの和みつつ進んでリパリス ジャバニカの食虫植物感に(゚Д゚;)ビックリw
    2016年12月16日 21:29
  • 長さん

    nobaraさん、コメントありがとうございます。
    コウトウシランは沖縄の「ビオスの丘」で見たことがありますが、確かにスパトグロッティス ポルツスフィンシイに似ていますね。これは花茎が枝垂れますが、コウトウシランは直立していた記憶です。
    リパリス ジャバニカは葉が1枚しか生えず、葉の根元から花茎が立ち上がっていました。葉が花茎を抱くという感じですね。
    2016年12月16日 21:56
  • 長さん

    mori-sanpoさん、コメントありがとうございます。
    リパリス ジャバニカのように、1枚の葉と花穂からなるランって珍しいですよね。緑一色ですが、花粉を媒介する昆虫の形に花の形を進化させたのかも知れません。
    2016年12月16日 21:59
  • 長さん

    なおさん、コメントありがとうございます。
    目はランランと輝いていたのですが、今回は写真のピントがイマイチで、参りました。ですから、今日、また見に行っちゃいました。
    武蔵丘陵森林公園にはクモキリソウの自生がありますか。見てみたいものです。
    ワカサハマギクはリュウノウギクの染色体数を倍にしたものなんだそうです。
    2016年12月16日 22:03
  • 長さん

    月奏曲さん、コメントありがとうございます。
    リパリス ジャバニカが食虫植物に見えましたか。大きな葉が緑色の昆虫を飲み込む感じ?
    2016年12月16日 22:06
  • すーちん

    お早うございます
    温室の環境が余程居心地
    良かったので発芽した
    んですね~
    2016年12月17日 07:24
  • 長さん

    すーちんさん、コメントありがとうございます。
    ランなどの育成実験の様子は、その一部をガラス越しに覗ける場所がありますが、温室と言うより実験室といった感じです。
    2016年12月17日 09:05
  • ジュン

    ユニークで個性的
    ランの魅力は尽きないですね
    リパリス ジャバニカ
    凄いランですね
    2016年12月17日 14:45
  • はるる

    先日、外国の山の番組で山ガイドさんが、普通に咲いているランを紹介していました。こんな高級なランが山歩き中に見られるのは不思議な感じがしました。
    ワカサハマギクも貴重なキクなんですね。
    2016年12月17日 18:50
  • 長さん

    ジュンさん、コメントありがとうございます。
    次々にユニークなランが登場するでしょう?これが楽しいかららん展は見逃せないのです。
    2016年12月17日 21:12
  • 長さん

    はるるさん、コメントありがとうございます。
    日本でも75属230種が確認されており、かつては山で見ることが出来たのですが、かなり採り尽くされてしまったようです。
    ワカサハマギクも自生地では絶滅が危ぶまれているようです。
    2016年12月17日 21:18
  • うふふ

    こんばんは!
    ランの種類はどのくらいあるのでしょうね。
    見たことのないお花ばかりです。
    野生ランは可愛らしいお花ですが、たくましくもありますね。
    2016年12月17日 22:41
  • 長さん

    うふふさん、コメントありがとうございます。
    ランは原種だけで15000種類以上と言われており、人工交配で生み出された品種を含めると2、3万種類はありそうです。
    ランがこの世に現れた頃にはもう地上ではあらゆる植物が繁殖しており、厳しい条件で生きなければならなかったので、多様な変化を遂げたそうです。
    2016年12月18日 00:08

この記事へのトラックバック