膵腫瘍摘出/入院の記(その2) 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)について

 私の入院中に、元横綱・千代の富士が逝去されましたが、報道では膵臓がんだったそうです。
 膵臓がんは、早期の頃はほぼ自覚症状がなく、血液検査でも発見されにくいため、がんが進行してから発見されることが多い病気です。手術で切除したとしても3年以内に再発する可能性が約90%といわれ、再発後の余命は3カ月~1年くらいという非常に恐ろしい病気です。

 手術前に、膵臓にできる腫瘍の分類について伺いましたが、膵臓がんは下図のうちで5番に分類されています。
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 前回記したように、私の病名は「膵管内乳頭粘液性腫瘍」で、上図では3番に分類されています。
 下図は、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMNと略称される)の説明です。
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 IPMNは膵管内に出来、粘液を作り出します。次第に大きくなり、膵管を太くする(膵管拡張)と共に、膵液の流れをせき止める性質があります。結果として、糖尿病を発症しますが、私も同様でした。
 下図は、T外科部長が私のIPMNの発生場所について書かれたものですが、太線が膵臓で、左から、頭部、体部、尾部となります。
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 尾部に斜線で示したものが分枝膵管型と呼ばれるIPMNで、直前の超音波内視鏡検査では直径が20mm越えの多房性膿疱性病変と記されていました。
 更に、体部の頭部寄りに主膵管型IPMNがあり、超音波内視鏡検査では12.8×7.3mm大の乳頭状隆起性病変と記されていました。
 もう1カ所、主膵管型IPMNの左側に3.1mm程度の不整隆起が発見されましたが、これは悪性腫瘍ではなかったようです。
 手術はこの不整隆起も含めて取り除くため、膵臓頸部(頭部と体部の中間)にメスを入れました。結果とした、膵臓の約7割と脾臓の全部を摘出した訳ですが、胃の裏側から脾臓と膵臓を引き起こし、膵臓にメスを入れるために、開腹箇所はみぞおちからへその下まで約21cmと長いものになりました(縫合は24針)。

 IPMNは、良性の小さな腫瘍として発生し、その後、時間を経て次第に大きくなり、最終的には浸潤癌になることが知られています。浸潤癌に至る前に診断・治療できれば、「治癒できる膵癌」として注目されています。

 私の場合は幸いにも早期発見されたことと、膵臓頭部にはIPMNが発生しなかったことが幸いしました。
 もし、膵頭部にIPMNがあった場合は十二指腸、胆管、胆のうを含めて膵頭部を切除します。切除後は、脾臓、胆管、消化管などの再建も必要になり、複雑な手術になるそうです。

 次回は、IPMN発見の経緯について記そうと思います。
 (つづく)


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