特別企画「ランの家系図をみてみよう!」(前編)

世界らん展日本大賞2016にて(7)
 2月15日の午後、東京ドームで開催中の「世界らん展日本大賞2016」に行ってきました。
 この展覧会では、毎回、特別企画の展示が行われていますが、今回は、「世界最大の蘭と極小の蘭」、「蘭の家系図をみてみよう!」の二つでした。
 今回の報告は、後者の特別企画の方で、ランの家系図を作った人として知られる、ラン研究家のフレデリック・サンダーの偉業をたたえるものです。
 下の写真は、特別展示の様子で、壁面にカトレアの家系図が書かれ、有名な交配種が展示してありました。
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ランの戸籍簿
 ランは原種だけでも15,000以上あると言われ、その交配種は膨大なものになります。現在は、国際栽培者登録機関(ICRAs)の下で、英国王立園芸協会(RHS)内にある蘭登録官により、ラン科植物のすべての交配種の登録名・交配親・登録年度・登録者などが管理されています。つまり、「ランの戸籍簿」(サンダーリストと呼ばれる)があるのですが、その管理システムが生まれる基礎を作った人がフレデリック・サンダーなのです。
 ランの交配で新種を作り出した人は、このサンダーリストで検索し、重複がなければ登録することが出来ます。

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 展示されたカトレア系交配種を、登録の古い順に並べてみました。

カトレア ドミニアーナ (1859年)
Cattleya Dominiana (C. intermedia x C. maxima)
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カトレア ローレモッシェ (1896年)
Cattleya Lawre-MOssiae (C. lawrenceana x C. mossiae)
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レリア マロニー (1904年)
Laelia Maronii (Laelia rubescens × Laelia anceps)
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カトレア ファルコン (1917年)
Cattleya Falcon (C. Aureole x C. coccinea)
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カトレア アンザック (1921年)
Cattleya Anzac (C. Marathon x C. Dominiana)
赤系カトレアの往年の名花
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カトレア ホーレス (1938年)
Cattleya Horace (C. trianae x C. Woltersiana)
優秀な交配親品種として非常に有名な品種
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リンコレリオカトレア パストラル (1961年)
Rhyncholaeliocattleya Pastoral (C.Mademoiselle Louise x Rlc.Deesse)
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 交配により、年を追うごとに美しくなってきていると思われませんか?
 後半では、更に美しくなったカトレア系交配種を紹介します。
 (つづく)

この記事へのコメント

  • コスモス

    やはりカトレアの美しさに勝るものがないという気がしますね。
    カトレアホーレスはよく見る花です。
    これ以上美しくなってどうするのといいたいですが。植物の研究も終わりがないのでしょうか。
    2016年03月04日 14:14
  • goki

    こんにちは
    綺麗な、カトレアの進化の様子でしょうか
    年を重ねるごとに美しく成り素晴らしい
    眺めですね。
    此れからも更に美しさに磨きをかけるの
    でしょうね。
    2016年03月04日 14:23
  • river

    「いつの時代も中心はカトレア」ですかね。現在、洋ランの交配種は世界中に数十万種も存在します。交配種の宿命と言いますか人気絶頂の花も数年のうちに見向きもされなくなることも少なくありません。現在は交配だけでなくメリクロン技術が発達しましたので色、大きさ、形、花の付き方、花と株とのバランスなどが評価されトータルで優れたものでないと生き残れないようです。
    2016年03月04日 15:22
  • みっきい

    企画展で「ランの家系図」があるのですね!
    カトレアの登録の古い順に写真を並べてくださいましたが、
    カトレア ドミニアーナ(1859年)から(1961年)へ7枚、年ごとに美しくなってきていると思います!!
    まだまだ進化するのですね!?
    2016年03月04日 17:03
  • なおさん 

    名の通ったランの交配種はリストに登録されているので、家系図も調べやすいですね。ひとの家系図の場合は、かならずしも正しいとは限らないのですが、ランの場合はリストに登録されたものは、まずまず正しいのでしょうね。

     交配を重ねると洗練されてくるのでしょうが、まれには先祖返りなどもあるのでしょうねえ。
    2016年03月04日 18:04
  • mori-sanpo

    植物は花卉、農産物など育種技術は日進月歩していますが、特に美を追求する蘭は国際的に統一された家系図が作成され、次々と交配種が創られているんですね。
     カトレアの交配種、たしかに年代を経るにしたがって、更に美しくなっていますね。
    2016年03月04日 20:57
  • 長さん

    コスモスさん、コメントありがとうございます。
    カトレア ホーレスは「これぞカトレア」という有名な品種ですから、ご覧になった方も多いようですね。
    今は交配だけでなく、ハイテク技術も使った改良が行われるようになりました。
    2016年03月04日 21:11
  • 長さん

    gokiさん、コメントありがとうございます。
    サンダーリストができたお陰で、カトレアの進化の歴史を容易に遡ることが出来るのですね。次回は更に美しくなったカトレア径好悪は異種をご覧いただこうと思います。
    2016年03月04日 21:13
  • 長さん

    riverさん、コメントありがとうございます。
    やはりランの女王と言われるカトレアが改良品種づくりの中でも中心を占めるのでしょうね。時代と共に人間の好みは変わっていきますから、忘れ去られた品種も数多くあると思います。
    これからも人間の飽くなき探究心がランをより進化させるでしょう。
    2016年03月04日 21:16
  • 長さん

    みっきいさん、コメントありがとうございます。
    交配の歴史を記録し始めた方はおられたからこそ、現在のカトレアが女王としての地位を保っていられるのかも知れません。今後もランの改良はより進化することでしょう。
    2016年03月04日 21:19
  • 長さん

    なおさん、コメントありがとうございます。
    サンダーリストはインターネットでも検索が出来るシステムになっていますから、世界中の誰もが交配親を知ることが出来るし、リストにない新種を登録することが出来るようになっています。こんなシステムがあるのはラン科だけでしょうね。
    恐らく、交配で両親を上回る結果が出なかったものや、先祖返りしたものも多数あったと思いますよ。
    2016年03月04日 21:23
  • 長さん

    mori-sanpoさん、コメントありがとうございます。
    膨大な交配種を管理している機関があるというのは驚異的です。このシステムのお陰で、新種は容易に登録できるし、逆に組み合わせが行われていないものを探すことだって出来ますから、まだまだ改良は進むことでしょう。
    2016年03月04日 21:26
  • k.たじまん

    こんなに、たくさんの種類の蘭があるのですね!
    いろいろ勉強になります。
    2016年03月04日 21:40
  • 長さん

    K・たじまんさん、コメントありがとうございます。
    ランは交配種を含めれば数十万種類もあると言われますから、このくらいで驚いてはいけません(笑)。
    2016年03月04日 22:01
  • eko

    「ランの家系図」ですか。膨大な種類があるラン、これを見ればどんな経過をたどっているかが分かりますね。
    年を重ねるごとに美しくなっているのが分かります。人間の飽くなき追求心は永遠に続きますね。
    2016年03月04日 23:02
  • 長さん

    ekoさん、コメントありがとうございます。
    交配種の登録機関があることは知っていましたが、今回調べてみて、初めて英国王立園芸協会が事務を行っていることを知りました。
    人工交配に飽き足らず、無菌培養で確実性を増したりしてきましたが、今後はバイオ技術も活用されるでしょうね。
    2016年03月04日 23:33
  • 慈園

    ランの原種だけでも相当数あるんですね~
    「ランの家系図」
    どのように改良を重ねられたか
    私には想像もつきません。

    人間の欲望(飽くなき探求心)が
    争いの道具や環境破壊に向かうのは
    よろしくないですが、美しいもの
    人の心を癒すお花などに費やされるのは
    大歓迎。
    見事なランに圧倒されています。

    長さんの研究熱心さにも脱帽です。
    2016年03月05日 08:59
  • 長さん

    慈恩さん、コメントありがとうございます。
    洋らんが初めてヨーロッパに紹介されたのは18世紀の半ば、当初は栽培法も分らなかったのですが、19世紀半ばから交配が始められたそうです。以来150年以上、交配による改良が加えられてきたんですね。
    やはり、より美しいものを求めるのはいずこも変わらないようですね。
    2016年03月05日 12:54
  • はるる

    家系図これもテレビで見てびっくりしました。
    よく作りましたね。
    本当にきれいな花です。
    こんなにランを拝見していると、どこかで見かけたとき素通りはできなくなりました。
    2016年03月05日 20:43
  • 長さん

    はるるさん、コメントありがとうございます。
    現在の管理体系を作るには最初に手がけた人がいなければ成立しません。フレデリック・サンダーは始め商売にしようと思っていたようですが、交配の魔力に取り付かれるとともに、ランの研究をして家系図を作り始めたところがすごいです。
    2016年03月05日 21:30

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